中国の知的財産権保護 (商務部発表) 2005年3月11日
中国政府は知的財産権の保護業務を一貫して非常に重視しており、知的財産権保護を改革開放政策と社会主義法制建設の重要な一部と見なしている。中国政府は、知的財産権保護制度を技術の進歩や文化の繁栄、経済的発展において重要な意義と役割を持つものと捉えており、社会主義市場経済の正常な運営を保証する重要な制度であるだけでなく、国際的に科学技術や経済、文化の交流と協力を行う上での基本的な環境、条件の一つであると考えている。1980年代からのわずか20年ほどの間に、中国は大きな進歩と発展を遂げた。特にここ数年、中国政府は「標本兼治(根本的な治療と局所療法をあわせて行う)」「着力治本(根本的な治療に力を入れる)」という原則に基づき、偽造、海賊版の取り締まりをめぐって、知的財産権全体の保護水準向上の努力の面で、一連の措置をとり、大きく尽力し、目覚ましい成果を挙げた。
一、中国の知的財産権の立法状況
1980年代の改革開放初期に、中国は知的財産権保護の法制度建設を開始した。経済発展と科学技術の進歩の要求に適合するために、中国の国民経済発展の客観的な必要に基づき、国際公約や条約の規定、その他の国家の知的財産権保護立法分野での先進的な経験を参考とし、中国は知的財産権保護の立法システムの構築と健全化を進めてきた。中国の現在の知的財産権保護法律システムは主に法律や行政法規、部門規則の3つの部分からなる。そのうち、専門の法律には「商標法」、「専利法(特許法)」、「著作権法」などがある。専門の行政法規には「商標法実施条例」、「専利法実施細則」、「著作権法実施条例」、「知的財産権税関保護条例」、「コンピュータソフトウエア保護条例」、「集積回路配置図設計保護条例」、「植物新品種保護条例」などがある。専門の部門規則には「著名商標の認定と保護に関する条例」、「集団商標、証明商標登録および管理方法」、「専利実施強制許可弁法」などがある(主な専門の知的財産権の法律や行政法規、部門規則の発表と改正の具体的な状況は表1を参照)。この他に、中国の民法、刑法、対外貿易法、最高人民法院、最高人民検察院の発表した関連の司法解釈の中にも知的財産権保護の専門規定がある。つまり、中国には比較的健全な知的財産権保護の法律システムが構築されており、これは世界の各国及び国際組織に普遍的に認められている。
健全な知的財産権の法律システムの構築を続けるのと同時に、中国は実際の必要に基づいて関連の法律法規を改正してきた。特に、WTO(世界貿易機関)加盟の過程での加盟条件を履行するために、中国政府はWTOの「知的所有権の貿易関係の側面に関する協定」(TRIPS)の関連規定を厳密に遵守し、国内の知的財産権立法を改正、改善した。改正後の法律法規では権利保護の範囲を拡大し、権利者の保護と司法審査に関する内容を強化して、中国の知的財産権保護の法律制度を改善し、中国の知的財産権保護の法律をTRIPSの規定と完全に一致させた。例えば改正後の「中華人民共和国商標法」及び実施条例では、商標保護の客体となる範囲を拡大し、地理標識と著名商標の保護について専門に規定し、優先権に関する規定を増やし、商標確定権の行政判決の司法審査を増加、権利侵害行為に対する調査·処理を強化した。改正後の「中華人民共和国専利法」及びその実施細則では、専利(特許)の保護客体を薬品や食品、化学的手段を通じて得られた物質などへと拡大、専利の保護期限を延長し、専利強制許可授与の条件を改善、外観設計や実用新型専利に対する行政裁決の司法審査を増加した。改正後の「中華人民共和国著作権法」及びその実施条例では保護を受ける権利の種類を増やし、実演者と制作者との権利に明確な境界を定め、財産保全と証拠保全に関する臨時措置の規定を増やし、法定賠償額に関する規定を増加、社会·公共の利益を損なう権利侵害行為に対する行政処罰を重くした。改正後の「中華人民共和国専利法」、「中華人民共和国商標法」、「中華人民共和国著作権法」などではまた、訴訟前の関連行為の停止を命ずる臨時禁止命令を付け加え、権利者に対する保護を強化した。こうした法律法規の改正により、中国の知的財産権保護の法律システムはより改善された。
この他にまた、中国は知的財産権の保護に関する新しい法律や法規の研究、制定を積極的に進めており、例えば2004年12月22日から施行された「最高人民法院、最高人民検察院の知的財産権侵害の刑事案件処理における法律の具体的運用をめぐる若干の問題に関する解釈」や、2005年3月1日から実施される「著作権集団管理条例」及び現在制定研究中の「情報ネットワーク伝播(配信)権保護条例」などがある。このような新たな法律が公布され、中国の知的財産権保護に関する法律体制がさらに改善されることにより、法律制度建設も前進し続けると信じている。
二、中国の知的財産権保護国際公約への参加と、知的財産権国際交渉への参与状況
(一) 中国の知的財産権保護国際公約への参加状況
国内の法律システム構築の改善を進めるのと同時に、中国は1980年代から主要な知的財産保護の国際公約や条約、協定に相次いで参加してきた。中国は1980年に「世界知的財産権組織設立条約」に加入したのを始めとして「工業所有権の保護に関するパリ公約」、「集積回路に関する知的財産権条約」、「商標国際登録に関するマドリード協定」、「文学·芸術作品保護バルニ公約」、「世界版権公約」、「許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約」、「国際特許協力条約」、「商品·サービスの国際分類に関するニース協定」、「微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約」、「意匠の国際分類に関するロカルノ協定」、「国際特許分類に関するストラスブール協定」、「植物新品種の保護に関する国際条約」、WTOの「貿易関連の知的財産権協定(TRIPS)」などに相次いで加入してきた(中国の知的財産権国際条約の加入状況は表2参照)。
知的財産権保護の国際公約や条約、協定に続々と加入する過程で、中国はこうした公約や条約、協定の下での各種の活動に積極的に参加し、中国政府の知的財産権関連の国際公約や協定の保護の真剣な立場と、国際的な義務を負うための十分な能力が、国際世論にはっきりと認められた。
この他に中国は、その他の知的財産権国際条約への加入を積極的に検討している。例えば中国は現在法律の制定と改正を始め、「著作権に関する世界知的所有権機関条約」(WCT)と「実演およびレコードに関する世界知的所有権機関条約」(WPPT)への加入の準備を進めている。
(二) 国際的な知的財産権制度改革と国際的知的財産権問題の交渉への中国の参加状況
中国は国際的な知的財産権分野の発展動向を大きく注目しており、世界貿易機構(WTO)や世界知的所有権機関(WIPO)、植物新品種保護国際同盟(UPOV)、アジア·太平洋経済協力会議(APEC)、アジア·欧州会合(ASEM)などの国際組織の、国際的知的財産権制度の改革や、国際知的財産権問題の話し合いに、関連部門を積極的に参加させている。例えば中国は、WTOの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定理事会(TRIPS理事会)の主導の下で行なわれた、WTOのドーハ会議の新しい重要な一部である、公衆衛生、地理標識、遺伝資源、伝統的知識などの知的財産権の議題の話し合いに積極的に参加している。中国は度々関連部門を世界知的財産権組織の会議へ派遣し、中国代表団は中国の知的財産権制度の成し遂げた業績や、国際的な特許制度、遺伝資源、伝統的知識、民間文学·芸術といった国際的知的財産権で焦点となっている問題に対する中国の見解について重要な発言を行い、中国の原則と立場を表明している。中国はまたUPOVやAPEC、ASEMなどの国際組織の会議への参加団を組織し、中国の知的財産権保護の成果を積極的に紹介すると共に、他の国家と有益な交流を行なっている。
三、 関連の国際組織及びその他の国家·地区と中国との知的財産権に関する交流、協力の状況
(一) 中国と関連の国際組織との知的財産権に関する交流と協力の状況
中国は多くの方式を積極的に採用して、世界知的所有権機関(WIPO)や植物新品種保護国際同盟(UPOV)、アジア·太平洋経済協力会議(APEC)などの国際組織と知的財産権の分野で全面的な交流と協力を強化しており、ここ数年に行なわれた協力活動からもその一端をうかがうことができる。2001年3月27日から29日まで、国家版権局と世界知的財産権組織(WIPO)は連合で広州で「『著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)』と『実演およびレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)』及び版権産業に対する影響に関するアジア·太平洋地区シンポジウム」を開催した。2001年6月10日から16日には、国家知識産権局と世界知的財産権組織が協力して、北京と上海で知的財産権法執行に関する高級シンポジウムグループを開催、国内外から合計250人が参加した。2001年7月23日から26日には、国際植物新品種連盟(UPOV)主催、農業部と国家林業局、国家知的財産権局が協力して「アジア地域植物新品種保護技術協調会議」が北京で行なわれた。2002年5月21日から25日には、国家知識産権局と世界知的財産権組織が協力し、国家工商行政管理総局や国家版権局と連合して、北京で中国·アフリカ知的財産権フォーラムや世界知的財産権組織の政策諮問委員会、世界知的財産権組織の創造力·発明フォーラムが開かれ、中国政府と世界知的財産権組織は期間中に「中華人民共和国国家知識産権局と世界知的財産権組織の協力枠組み協定」を結んだ。2003年11月20日から28日には、国家版権局と世界知的財産権組織は連合で「世界知的財産権組織版権条約(WCT)と世界知的財産権組織の表現·録音製品公約(WPPT)における『大衆への伝播権(発信権)の巡回シンポジウム』に関して」を開催した。商務部とアジア·太平洋経済協力会議は2004年4月北京で「APEC第18回知的財産権専門家グループ会議」と「特許保護と薬品事業可能性研究シンポジウム」などを開催した。こうした活動での各国との交流の経験は、中国及びその他の国家の知的財産権保護の強化の点で重要な意義を持っている。
(二) 中国とその他の国家·地区との知的財産権に関する交流、協力の状況
中国は他の国家·地区とも知的財産権分野で積極的に交流と協力を行なっている。中国とアメリカは1992年に「中·米知的財産権諒解備忘録」を結び、2000年に知的財産権の定期協議メカニズムを確立、毎年知的財産権に関する定期的な協議を行い、この基盤に基づいて2003年から知的財産権円卓会議を共同で開始し、また2004年には中·米商業貿易連合委員会の知的財産権保護業務グループを設立した。EUとの協力については、1992年6月30日に中国とEUは知的財産権保護に関する会談議事録に署名した。中国とEUは2003年10月30日に「中国·EUの知的財産権に関する対話メカニズム」確立に関する協定を結び、中国·EUの知的財産権分野の交流に新たなステージを構築した。2001年10月21日、22日には、中国とEUは知的財産権対話の第一回会談を開催した。双方は1996年から6年にわたって中国―EU知的財産権協力プロジェクトを行っている。他に、双方の部長級の中国·EU経済貿易混合委員会プロジェクトにも、知的財産権問題の討論が含まれている。中国とフランスの商標部門の間でも定期的に中国·フランス商標混合業務グループ会議が行なわれており、1998年9月24日に中国とフランスは「中華人民共和国政府とフランス共和国政府の知的財産権に関する協力協定」を結んでいる。中国は日本、韓国との間でも知的財産権分野で2国間、3カ国間の対話、協力メカニズムが構築されており、中国·日本·韓国の三カ国の知的財産権局の間では、2001年から毎年定期的に政策対話メカニズムが行なわれている。中国·日本の著作権行政部門の間では毎年定期会談が行なわれており、2003年には中国の国家版権局と日本の文化庁が「著作権及び著作隣接権の協力協定」を結んでいる。中国の工商行政管理総局商標局と日本の特許庁は1996年から、両組織の指導者の不定期な会談を行い、韓国の知的財産権局とは密接な業務協力関係確立のための交渉を行なっている。この他に、中日、中韓の2国間経済貿易連絡委員会、中日韓三カ国の経済局長会議でも知的財産権に関するテーマに触れている。中国はブラジル、メキシコなどの国家·地区とも交流と協力を行い、知的財産権保護の面で優れた効果をあげている
この他に、こうした対話と協力の枠組みの下で、中国はその他の国家と連合で何度も知的財産権問題に関するシンポジウムを開催している。国家版権局と中国―EU知的財産権協力プロジェクト事務所は2001年9月4日から6日まで北京で、版権集団管理シンポジウムを開催した。2003年8月下旬には中国の国家版権局と日本の文化庁が北京で「第一回中日著作権シンポジウム」を開催している。2003年10月23日?24日には、中国―EU知的財産権協力プロジェクトの枠組みの下で、中国の国家知的財産権局と欧州特許局が共同で北京で「中国·欧州知的財産権保護協力の回顧、現状と展望」国際シンポジウムを開催した。2004年10月には中国商務部と中国駐在EU代表団、中国駐在日本大使館が共同で「中·欧·日三カ国知的財産権シンポジウム」を開催した。中国は他の国·地域との有効な意見交換と対話を通じて、理解を促進し、互いに有無を通じあい、知的財産権保護水準の向上推進のために共に努力を行ってきた。
四、 社会の知的財産権保護意識向上のために中国が行っている宣伝活動の状況
中国政府は偽造、海賊版の取り締まり、知的財産権保護をめぐって、一連の宣伝措置を行なっている。主なものには、ニュース取材、テレビ放映、シンポジウム開催などの方法を通じて、法律普及のための宣伝の強化があり、特に新しい法律法規については広範な宣伝を行うと同時に、知的財産権法律の教育を全国の法制度宣伝教育業務に取り入れている。世論の監督を強化し、ニュースメディアの宣伝報道を通じて、数が多く範囲も広い典型的な案件を公開し、また市場経済秩序を損なった十大事件を何年にもわたって公開し、犯罪の抑止と法律違反に対する警告の効果をあげてきた。こうした宣伝活動は、大衆の知的財産権保護の意識を強化し、知的財産権の法執行や保護業務を行なう上での基礎を築いてきた。例えば国家知的財産権局は2001年4月に国家工商行政管理総局、国家版権局と共に「今日が未来を創造する」というテーマで、世界知的財産権の日をめぐる初めての一連の重要な宣伝と祝賀活動を行い、全国で知的財産権宣伝の新ブームを巻き起こし、知識と知的財産権保護を尊び、明るい未来を共同で作り出すという社会のムードを生み出した。
特に指摘するのに値するのは、2004年の全国市場経済秩序整頓·規範化業務計画に照らして、4月26日の「世界知的財産権の日」にあわせて、全国の整頓·規範化弁公室、全国のポルノ·海賊版取締弁公室、知的財産権局、公安部、海関(税関)総局、質検総局(品質監督検験検疫総局)、新聞出版総署、国家版権局など9つの部門·委員会が連合で組織した「知的財産権保護宣伝ウィーク」の活動である。この宣伝週は「知的財産権を尊重し、市場秩序を擁護する」というテーマで、2004年4月19日から4月26日まで全国範囲で展開された。知的財産権保護の常識を普及させ、知的財産権を合理的かつ有効に保護することの意義を宣伝、知的財産権制度が科学教育による国家振興や人材強国戦略、科学技術革新の促進、文化の繁栄、経済発展などの実施の面ではたす重要な役割を宣伝し、知的財産権保護分野で中国が行なってきた業務と成果を宣伝することを主旨とし、また知的財産権侵害の典型的なケース及び調査·処理状況を公開している。宣伝週には以下の一連の活動が含まれている。「中国の知的財産権保護状況」をテーマとする中外記者会見、「中国の知的財産権と経済発展の高級シンポジウム」、「現代の大学生と知的財産権のテーマ対話」、第二回「婦人発明家」選定活動表彰式、中央テレビ局放映の「中国の知的財産権」専門シリーズの宣伝番組と知的財産権の公共広告、「中国知的財産権報」などのメディアで行なわれた「知的産業権を尊重し、市場経済秩序を擁護する」というテーマの作文コンテスト活動、中央テレビ局、「中国新聞出版報」、捜狐ネットなどのメディアで行なわれた「著作権」知識コンテスト活動、中央テレビ局放映·中央テレビ局と一部の地方テレビ局が連合で制作した、全国の一般庶民の発明創造の「金智賞」表彰特別番組、全国各地で行なわれた小型展覧会、街頭コンサルティング、講座などの宣伝活動、中央テレビ局放映の「海賊版を取り締まり、知的財産権を保護する」というテーマの番組などである。宣伝週の活動を順調に行なうために、中国政府は全国の整頓·規範化弁公室、中央宣伝部、国務院新聞弁公室などの部門が計画·調整業務を担当するよう規定し、「知的財産権保護宣伝週」活動組織委員会を専門に設立、また全国各地方の関係部門に対して、宣伝週活動の準備業務を行なうよう通知、各地が宣伝週活動の重要な意義を重分認識するよう要求し、宣伝週の準備や実施とそれに続く段階の業務について具体的な要求を提出した。今回の宣伝週活動は範囲が広く、大規模で、大きな効果を上げた。中国政府はこの種の活動を定期的に行うことによって、知的財産権侵害犯罪を集中的に取り締まり、大衆の知的財産権の保護意識を向上させたい考えである。
五、 中国の知的財産権の法執行状況
(一) 中国の知的財産権の法執行方法
中国の知的財産権の法執行による保護には行政と司法の2つの方法がある。権利者は権利が侵害された時には法院に起訴することができ、また知的財産権の主管組織に訴えることもできる。
行政手段を用いて知的財産権を保護するのは、中国の知的財産権の法執行における重要な特徴である。専利法の規定に基づくと、国務院の関連主管部門又は地方人民政府は、専利管理機関を設立することができる。著作権法を有効に実施するために、中国政府は国家版権局を専門に設立し、各省·市、自治体、直轄市と比較的大きな都市でも版権行政管理部門を設立した。商標法の規定に基づき、商標管理は中央が統一的に登録し、地方が等級ごとに管理する原則を実施し、中央から省、市、地、県級の工商行政管理局にいたるまで、みな商標管理機構が設置されている。この他に、1995年6月に中国海関(税関)総署は知的財産権の辺境保護処を設立し、全国の各税関でもその地区で知的財産権保護を担当する主管部門と連絡者を指定した。このため、知的財産権者は司法ルートによる他に、こうした行政ルートを通じてその知的財産権を保護することができる。知的財産権侵害の行為については、権利者は行政主管機関に訴え、行政機関もその職権に基づいて調査を行うことができる。知的財産権の行政主管機関は調査過程で、権利侵害の物品を差し押さえ、権利侵害停止の禁止命令や罰金などの救済手段を採取することができる。行政プロセスによって権利侵害を取り締まる方が、比較的迅速で費用も少ないため、知的財産権者に歓迎されている。
司法の面では、中国の各級法院では知的財産権案件の審理を専門に担当する法廷がすでに確立されている。訴訟において法院は、財産保全と証拠保全の臨時措置を採取することができる。民事訴訟の権利侵害行為については、人民法院は法に基づいて権利侵害者に侵害停止の保証や影響の除去、謝罪、損害賠償といった民事責任を命じることができる他に、行為者の違法所得の没収や罰金、拘留といった制裁を行うことができる。犯罪を構成するものは、法に基づいて刑事的責任を追求、中国の「刑法」の規定によると、知的財産権犯罪には最高7年の実刑判決を言い渡すことができる。
(二) 中国の知的財産権法執行の新たな成果
ここ数年、中国政府は知的財産権の法執行の分野に多くの人力と物力を投入し、各種の偽造や権利侵害の海賊版行為を厳しく取り締まり、大きな業績を上げた。(表3、4、5を参照)
1996年から2003年10月まで、中国国内では163の違法ディスク生産ラインが摘発された。2003年8月に海関(税関)総署と新聞出版総署が行った「密輸海賊版破棄一斉行動」では、一度に4200万枚の海賊版ディスクが破棄された。
注目すべきなのは、中国の各級地方政府が知的財産権保護について、経済発展の促進作用という点で十分認識しており、各地の偽造行為を行う企業に対する地方保護主義が基本的に打ち倒され、偽造、権利侵害行為に対する地域を越えた取り締まりが積極的に行われている。中国の環淮海経済圏や華東3省1市、東北3省ではみな商標法執行ネットワークが構築され、こうしたネットワークも、地域を越えた行政法執行の協調と協力の面で一定の役割を果たしている。同時に、法執行部門では相互の協調、協力の強化を重視し、例えば中国の知的財産権の司法、行政部門では関連の連合会議制度を確立し、積極的で有効な協力を展開している。
実践によって証明されたように、各機関の法執行業務を通じて知的財産権侵害の不法行為を有効に取り締まり、知的財産権の権利者と消費者の合法的な権利を確実に保護し、市場経済環境を改善、公平な競争の市場経済秩序を擁護している。
(三) 最高人民法院、最高人民検察院の発表した「知的財産権侵害刑事案件手続きの具体的な法律適用の若干の問題に関する解釈」を発表
知的財産権の刑事司法保護をさらに拡大し、知的財産権の権利侵害犯罪を有効に取り締まり、市場経済の秩序を擁護するために、中国の知的財産権の法的保護の水準を引き続き向上させ、中国刑法の関連規定に基づき、知的財産権の権利侵害犯罪取り締まりの実際の必要に基づき、最高人民法院と最高人民検察院は2004年12月8日に「知的財産権権利侵害の刑事案件手続きの具体的な法律適用の若干の問題に関する解釈」(以下「解釈」と略称)を発表し、同解釈は2004年12月22日から施行されている。
このたび発表された解釈では、知的財産権侵害の犯罪に刑事責任を適用する具体的な基準について、詳細かつ明確に規定しており、知的財産権の刑事処分の基準を引き下げ、知的財産権の刑事保護の範囲を拡大、関連の専門用語を明確にし、各地でこうした案件手続きに法律を適用する際の難しい問題を一挙に解決し、関連の刑法条文の操作性を向上させた。
起草過程では、司法機関は国内の関係企業や主管部門に意見を広く募集し、また関連の問題について何度にもわたり、多くのルートと多くの方法を利用して、中国外資系企業協会、EU委員会、ビジネスソフトウエア連盟、米国映画協会、中国米国商会、米国情報産業機構などの業界協会や部門の意見を聴取した。「解釈」の起草過程においては広範な意見聴取を行い、特に国家と多国籍企業の意見を充分に重視している点は以前の司法解釈起草では見られなかったということができる。
司法解釈の発表は、社会主義市場経済の発展と知的財産権の法律制度を整えるという要求に適応し、中国の国際社会に対する約束を徹底して履行し、良好な交際的イメージを樹立するための司法上の行動である。「司法解釈」の発表、実施は、中国の知的財産権の法執行と審判の水準の向上に役立ち、知的財産権侵害犯罪の取り締まりの強化に有利で、知的財産権の刑事保護水準を向上させるだろう。
(四) 中国政府が実施した政府ソフトウエアの正規版化
国際的な約束をより確実に履行するために、中国ソフトウエアの知的財産権保護業務を推進するために、中国の国務院は2000年に文書を発表し、政府機関と国有企業で正規版ソフトウエアを使用するよう要求した。2001年には、国務院文書の精神を徹底するために、国家版権局、元国家計画委員会、財政部、情報産業部が連合で文書を発表し、政府機関と国有企業が必ず正規版ソフトを使用することを要求、また定期的な検査制度を確立した。中国政府は、国務院の関連部門で整理と検査を行い、2002年5月までに使用ソフトウエアの正規版化業務を完了した。中国政府は現在、地方の各級政府が国務院の関連規定を厳密に執行するよう重点的に推進中で、また大きな進展を見せている。
(五) 国家知的財産権保護業務グループの、外資系企業との定期的な意見交換·協調のメカニズム及び知的財産権保護の専門行動
1? 国家知的財産権保護業務グループ
知的財産権保護分野での組織指導を強化するために、国務院は2004年8月、国家保護知的財産権業務グループを調整·充実させた。国務院の呉儀副総理がグループリーダーとなり、国務院法制弁公室、公安部、商務部、工商総局、新聞出版署(版権局)、海関(税関)総署、知的財産権局などの12の部門がメンバー組織となり、全国の知的財産権保護業務の計画、協調業務を担当し、重大事件を監督することとなった。
2001年に全国市場経済秩序整頓·規範化指導グループ弁公室が設立されて以来、権利侵害の海賊版取り締まりなどの、市場経済秩序を損なう行動の取り締まりを集中的に何度も行ってきた。2001年には、指導グループの協調と指揮の下で、工商、品質検査、衛生、農業、薬品監督などの行政法執行部門が、法執行部門の人員のべ890万人以上を投入して、偽造商品の製造·販売拠点50万ヶ所以上を摘発、120万件以上を検挙したが、これは金額にして164億元以上にのぼるものである。
2? 外資系企業との定期的な意見交換·協調のメカニズム
外商投資環境をさらに改善し、権利侵害と偽造商品取り締まりの業務を強化し、知的財産権を保護するために、中国政府は2003年に「政府部門と外資系企業の定期意見交換·協調メカニズム」を確立した。同メカニズムは、全国の市場経済秩序整頓·規範化指導グループ弁公室が指揮をとり、公安部、商務部、海関(税関)総署、品質検査総局、新聞出版総署、食品·薬品管理監督局、知的財産権局、最高人民法院、最高人民検察院と中国外資系企業協会からなり、主に外資系企業との定期的な意見交換を担当し、偽造商品取り締まりや知的財産権保護、外国資本投資環境の改善、統一の開放的、公平で秩序のある市場秩序の擁護などの分野において、各組織からの問題や提案された意見、建議を理解すると共に、関連部門を調整して研究を行う。このメカニズムを通じて、各法執行部門と外資系企業は権利侵害取り締まり分野での協力を強化し、明らかな効果をあげている。
3? 知的財産権保護の専門行動
中国の知的財産権保護業務がさらに大きな効果をあげるために、国務院は、2004年9月から2005年8月まで国家知的財産権業務グループが指揮をとって、全国で知的財産権保護の専門行動を行うことを決定、重点分野や重点的段階、重点地区の知的財産権保護について専門の整頓活動を行っている。これは、中国の知的財産権保護に対する立場と決心を十分に表すものである。国務院は今年8月19日と8月27日に相次いで国家知的財産権保護業務グループ会議と全国知的財産権保護専門行動の電話会議を行い、呉儀副総理が会場で講話を行い、知的財産権保護の専門行動に対して指示と手配を行った。
今回の知的財産権保護の専門行動は、「全国統一の指導、地方政府の担当、部門が協調して指導、各方面が連合して行動」という業務計画に基づき、国家知的財産権保護業務グループが指導を行い、各地区と各部門が具体的に実施した。専門行動では、重点分野と重点的段階、重点地区を最優先し、一ヶ所の優れた業績で全体の向上を促進し、全面的に行動を推進する。いわゆる重点分野とは、商標権や著作権、専利権の保護を指す。重点的段階とは、貨物の輸出入、各種の展示会や商品卸売市場、商標加工、印刷·複製などを指す。重点地区とは、偽造行為が比較的集中している地区を指す。今回の行動では、知的財産権の権利者からの訴えが強く、情況が深刻で、影響が大きな権利侵害の重要な案件を突破口として積極的に行動し、知的財産権侵害の不法犯罪分子を厳重に取り締まっている。今回の専門行動では、海賊版ディスクと商標権利侵害を最重点として取り締まりを行い、特に繁華街やホテル、交通の拠点などを重点とし、違法ディスクの生産ラインの摘発を引き続き厳しく行い、海賊版ディスクの路上販売を一掃する。各級政府の正規版ソフトウエア使用の監督業務を引き続き徹底し、監督業務を制度化、日常化し、発生した問題を速やかに是正する。北京や上海、天津、東南沿海地区、各地の比較的大きな商品取引市場を重点的に規範化し、商標権侵害行為を厳しく取り締まる。国家知的財産権保護業務グループは北京、上海、天津、河北、内蒙古、遼寧、江蘇、浙江、安徽、福建、山東、河南、湖南、広東、陜西などの15の省や自治区、直轄市を今回の専門行動の重点地区と定め、専門研究を行い、強力な措置を取り、重点的な整備を行うとともに、再発を厳しく防止する。専門行動の順調な進展を保証し、各関連部門がその業務につとめ、共同で協力し、地方政府の責任を強化し、統一的、効果的、協調的な知的財産権保護の法執行協力メカニズムを形成して、各地域が連合して法執行を行い、知的財産権保護を徹底的に強化し、知的財産権権利侵害案件を調査し、地方保護主義を防止する。今回の専門行動が徹底的に効果をあげるために、国家知的財産権保護業務グループと関連部門は6つの監督·指導グループを組織、それぞれ関連の地域に派遣し、専門行動の実施状況を重点的に監督·指導している。
六、 結び
中国政府は知的財産権の保護を一貫して重視し、国外の知的財産権の保護を重視するだけではなく、中国独自の知的財産権の保護も同様に重視している。知的財産権の保護は、中国のWTO加盟に際しての約束を履行するという必要からだけではなく、対外開放の拡大と投資環境の改善、国外の投資と先進的技術の誘致という必要からも、また同時に自身の経済建設と社会発展を加速させるという内在的な必要からも、全国範囲で認識されるようになってきている。
注目すべきなのは、どのような国家においても、知的財産権制度の構築や改善、知的財産権保護意識の向上の面においては、徐々に発展してゆくプロセスをたどっているということである。ある国家の知的財産権保護の水準は、その経済発展と技術進歩の水準と切り離すことはできない。中国は現在、知的財産権保護の分野でまだ問題が存在するが、こうした問題は現在、重視されて解決されてきている。中国政府の知的財産権保護に対する決心と態度は一貫しており、各国の知的財産権権利者の合法的権利は中国では保障されており、全ての権利侵害、偽造行為はみな法に基づいて処理されている。また、知的財産権の保護は世界的な問題であり、各方面が力を合わせて協力する必要がある。中国政府は、関連国家が中国の知的財産権保護に対する懸念を取消し、中国の知的財産権保護分野での法律や法規、法執行の情況をより理解し、協力の方法を取って、技術の伝播と進歩を共同で促進することを希望している。 |