2003年全国知的財産権司法保護概況
最高人民法院民事第三法廷
2003年は、党の十六大(共産党第16回全国代表大会)と三中全会(第16期中央委員会第3回全体会議)の精神を貫徹し、社会主義市場経済体制戦略を実施し、全面的な「小康」(いくらかゆとりのある)社会建設の一年目にあたる。過去1年に、全国の法院および知的財産権の審査官は「三つの代表」重要思想と胡錦涛総書記の「七一」講話の精神を真剣に学び、「公正と効率」の業務主題の実践につとめ、「過去を振り返り、未来を拓く」教育活動と司法大型検査を契機として、民衆のための司法という業務要求を徹底し、知的財産権審査作業の各任務の完成につとめ、全国の知的財産権審査業務の全体的水準を向上させ、中国が法律に基づいて知的財産権保護を行っているという国際的イメージを確立するために、絶えず努力を重ね、新たな成果を得てきた。
一、 知的財産権審査の各職能の効果を十分に発揮し、法律に基づいて大量の知的財産権案件を受理·審査完了させる。
知的財産権は重要な財産権のひとつであり、民事法による保護を受けるだけではなく、行政法と刑事法による保護も受けている。これに対応して、関連の手続法に基づいて中国の知的財産権の司法保護業務には知的財産権の民事訴訟、知的財産権の行政訴訟と刑事訴訟も既に含まれている。当然ながら、知的財産権は本質的に私権の一種であり、このためそれに対する司法保護も主に民事司法保護となる。
情勢の発展と法制度の健全化に伴って、中国の知的財産権の民事訴訟分野も拡大をつづけている。現在人民法院が受理している知的財産権の民事案件はTRIPs協議に規定されている特許(発明、実用新型、外観設計)と植物新品種、商標、著作権と著作隣接権およびコンピューターソフトウエア、集積回路配置図、営業秘密、地理標識などを含む全ての分野の知的財産権をカバーしており、またコンピューターネットワーク著つぁくけん、コンピューターネットワークのドメイン名、実用芸術作品、民間文学芸術、原産地名称、商標と企業名称の重複の問題、訴訟前の臨時措置および権利不侵害の確定訴訟などの紛糾等、知的財産権の関連分野の多くの新しい類型案件も含んでいる。当然、伝統的な知的財産権の譲渡関係の技術契約訴訟の調整や、不正競争訴訟も含んでいる。
2003年、全国の地方法院が新たに受理した知的財産権の一審、二審、再審民事案件は合計9271件で、前年同期比で18.86%上昇した。結審したのは8978件で25.36%上昇している。未結審案件は2816件で11.22%上昇している。2003年1年間に受理した知的財産権民事一審案件は6983件、そのうち専利(特許)案件は2110件、著作権案件は2493件、商標案件は926件、技術契約案件は1105件、植物新品種案件は100件、技術秘密などその他の知的財産権案件は249件、結審したのは6880件となっている。知的財産権民事二審案件の受理数は2237件、結審したのは2064件。再審案件の受理数は51件、結審したのは54件である。結審した案件のうち、渉外知的財産権案件は一定の割合を占めており、2.83%となっている。そのうち渉外知的財産権は94件、香港関連の案件は58件、台湾関連の案件は42件、マカオ関連の案件はなかった。各種の知的財産権案件のうち、権利侵害、権利帰属の割合が高く、79.25%を占めている。案件の控訴率は高く、2003年の二審の受理案件は一審判決と起訴棄却裁定を受けたものが71.86%を占め、再審案件は比較的少なくなっている。2003年1年間に結審した訴訟金額は合計15億元近くとなっている。
本年度の知的財産権民事案件と一般の民事案件を比べると、案件の絶対数は多くないものの、明らかな増加傾向が見られる。一審の受理案件は2003年の同時期に比べて12.61%増え、二審の受理案件は同44.88%増加しており、増加率の大きさは法院の民事案件数量全体が減少している情況と比べて明らかに対比が見られる。これはWTO加盟と法律の修正が知的財産権審査業務に大きな影響を与えていることも表している。各種の知的財産権の案件のうち、著作権案件の上昇の割合が最大となっており、新規に受理した案件は前年同期比で36.68%上昇し、特に経済的に発達した地区で著作権紛糾の増加率が大きく、江蘇省は2003年には前年同期比で63.04%増加している。商標権案件がそれに続き、30.98%上昇している。専利(特許)権案件も若干上昇し、前年同期比で1.39%上昇し、技術契約案件は減少して前年同期比で16.16%減少している。北京、広東などの経済発展地区の案件の増加が比較的ハイスピードである他に、中西部地域の一部の省での案件の増加が目立っている。寧夏省は2002年にはわずか9件しか知的財産権案件がなかったが、2003年には47件に達している。甘粛省の一審の受理案件数も前年同期比で88.6%増加している。遼寧省の一審受理案件は2002年の1.53倍、湖南省の一審受理案件数は同59.6%の増加となっている。雲南省全体では2000年に25件の案件しか受理しなかったが、2003年には119件に達している。しかし上海、安徽省、浙江省といった一部の省と地区では案件の増加幅が小さく、福建省では若干減少している。
経済と科学技術の発展の地域的不均衡から、案件の分布は明らかな地域的な不均衡を示している。案件は主に広東、山東、北京、江蘇、浙江、上海などの経済的、文化的発展地区に集中し、2003年のこの6省·市で新たに受理された一審の知的財産権民事案件は全国の約64.21%を占めており、またこれらの地域への集中化の傾向はより強まっている(2002年のこの比率は62.18%)。経済発展に欠ける地域の案件総数は依然として少なく、青海省では1年で7件の知的財産権の一審民事案件しか受理していない。こうした地域間の不均衡は各省にみられ、基本的に各地の省では都市、経済特区と沿海開放都市都市、経済発展都市に集中しており、その他の中級法院では1年間に殆ど知的財産権案件が発生していない。例えば湖南省では長沙、常徳、益陽、遼寧省では瀋陽と大連、福建省では福州、アモイ、泉州、新疆ウイグル自治区ではウルムチと石河子に集中している。
各省では基本的に主な類型の知的財産権案件を受理しているが、案件の類型でも地域間に分布の不均衡が見られる。例えば経済が相対的に遅れた地域では専利(特許)紛糾も依然として多い。植物新品種件の案件は主に農業の大省である山東、河南と甘粛などに集中している。技術内容に関する案件では、依然として実用新型と外観設計専利(特許)案件が多いが、最先端のハイテク技術の案件がますます多くなっている。例えば湖南長沙中級法院が受理した長沙通程デジタル制御設備有限公司の曽韜氏に対する訴訟、長沙弘力精密機械公司、中南大学技術秘密権利侵害案件、世界的なトップ水準を持ち、精度が国際標準6級以上に達する中国が知的財産権を有する初のデジタル制御歯車研磨機、デジタル制御フライス盤歯車研磨機の案件などがある。
案件の審判効率と審判の質はどちらも向上している。本年度、最高人民法院は全国の法院システムで審判期限超過のものを整理することに重点をおいた「公正と効率」司法大検査を行い、各級の法院は案件の審査期限超過問題を徹底して解決し、審判期限を極力短縮し、訴訟コストを低下させ、訴訟の効率を向上させ、大多数の知的財産権案件を審判期限内に結審させ、1年の結審案件の増加率は受理数に比べて8.83ポイント上昇し、結審比率は前年に比べて2.86ポイント上昇した。このように全国法院の知的財産権の審査期限超過案件整理は一定の成果をあげた。しかし、知的財産権授権·維持プロセスと、権利侵害訴訟プロセスは往々にして交錯し、契約訴訟と権利侵害訴訟、権利帰属訴訟が相互に関連しており、一部の案件は審理期間が依然として長期間にわたっており、中止された訴訟も多く、未結審の2375件の訴訟のうち訴訟を中止したものが326件、そのうち専利(特許)権侵害案件だけでも258件ある。審判の効率の向上を重視すると同時に、審判の質も確保しなければならない。全国の知的財産権案件の二審判決で、判決の変更率は18.70%、一審への差し戻し裁定の割合が6.69%となっている。上海の1年間の知的財産権民事二審案件では判決の変更率はわずか3.2%で、差し戻し裁定も出されていない。各級法院は知的財産権案件の裁判水準の向上を大変重視しており、特に甘粛、寧夏などの西武地区の法院では文書記述の水準が一般的に向上している。
紛糾解決における調停の役割を重視した。各級法院は審判業務の全過程で調停を導入し、積極的に開廷前あるいは閉廷後の調停を強化し、それぞれ異なった案件の情況、当事者の具体的な情況に照らして、感情的側面に対する配慮も誠実に行い、適宜対立を解消し、当事者の合法的権利を保護するだけではなく、社会の安定を保ち、大きな法的効果と社会効果を上げた。例えば陳勇氏が天津天獅生物工程有限公司などを訴えた専利(特許)件侵害案件では、双方はその専利(特許)をめぐる一連の紛糾から8年にもわたって争っていたが、最高人民法院の主宰の下で本案の二審の期間中の2003年初めに全ての争議を解決する和解協議を達成しかつすぐに実行した。このように法に基づいて当事者の合法的権利を平等に保護することに留意しただけではなく、当事者間の利益の合理的なバランスを保ち、案件処理の法律的効果と社会的効果の有機的な統合をも実現した。北京高級法院では、北京恒昇遠東電子計算機集団が北京市恒生科技発展公司などを「恒昇」商標件の侵犯で訴えていた紛糾案と、フランスのラコステ(La Chemise Lacoste)シャツ持ち株有限公司と香港のCrocodile Garments Ltdが鰐のマークの商標権を侵害したと訴えた紛糾案の調停に成功した。四川高級法院は瀘州太陽神酒廠と瀘州市江陽区三橋酒業有限公司の商標移譲契約紛糾案の調停に成功し、広汎に積極的な世論の評価を得た。統計によると、全国で結審した全ての一審の知的財産権民事案件のうち、調停または調停を経て訴訟を取り下げて結審した案件が、四川では59%、上海では56.6%、福建では48.8%、雲南では45.6%、安徽では37.5%、重慶では25%を占めている。新疆ウイグル自治区の高級法院では知的財産権案件の審判に「一二三四五」と名付けられた調停の新モデルを開発した(即ち、調停業務で「民衆のための司法」思想を確立し、任意原則と合法の原則を堅持し、あわせて法的効果、社会効果と政治的効果を考慮し、「察(調べる)」、「問(問いただす)」、「勧(忠告する)」、「断(判断する)」の4つのプロセスを遵守し、直接対面での調停と代理人による調停を結合させ、法制度教育と思想教育を結合させ、法院の力と社会の力を結合させることを拠り所とし、法廷での調停と閉廷後の調停を結合させ、「熱処理」と「冷処理」を結合させること)。上海高級法院では専門に「知的財産権案件の調停と訴訟取り下げの経験交流シンポジウム」を開催した。
権利侵害の民事責任方式の応用ケースでは、侵害行為の停止、損害賠償などが最も中心的な裁判形式である。しかし個別の案件では社会の公益を保護する必要から、一部法院では被告に侵害行為停止の民事的責任判決を出さずに、賠償責任を負わせるなどのその他の責任を負わせるところもある。例えば北京第一中級法院で争われた、中国音楽著作権協会が図書大厦、東方音像製品出版社などを相手取った「激情の燃える歳月」のVCDディスクの権利侵害訴訟では、原告は前者の被告の販売停止の請求を法院に提出した。謝罪·賠償と影響を排除することが、これまでの知的財産権の権利侵害案件の判決で一般的に適用されてきた民事責任の形式で、多くの法院では一身に属する権利と商業上の名誉毀損に対してのみ適用するべきだと気づいているが、少なからぬ法院では依然として専利(特許)と商標権利侵害案件の判決においてこの2種類の民事責任方式を適用している。
高額賠償請求の権利侵害案件が増加し、裁判で確定する賠償金額が高くなっている。特に法定の賠償方法を適用する案件が際立って増加し、一部の案件では法律に照らして最高法廷賠償金額が適用され、知的財産権の司法保護を拡大している。2003年、上海法院では合計5つの案件で法定の最高賠償金額の50万元が支払われた。上海第一中級法院が審理した北京華宇創新科貿有限責任公司が上海浦東新区張江化学繊維機器部品廠を専利(特許)権侵害で訴えた紛糾の一審、また上海第二中級法院が審理したDiscreet Logic Inc.,(カナダ)が上海中楽影視文化有限公司をコンピュータソフトウエア著作権侵犯で訴えた一審案件などがそれである。関連の法院は知的財産権を侵犯した刑事被告人に対して起こされた民事権利侵害の賠償訴訟を徹底して審判し、知的財産権に対する「立体的な」司法保護を強化しており、上海浦東新区法院だけでも8件の類似案件を受理している。上海第二中級法院はまた「辞海」の著作権侵犯による犯罪の刑事被告人に対して起こされた民事権利侵害賠償訴訟を結審したが、この判決では被告3者に対して連帯で経済的損害50万元を賠償するよう言い渡し、同時に権利侵害の主要な責任者である陜西省漢中印刷廠に対して6万元の罰金とする民事制裁判決を言い渡した。
最高人民法院の民事第三法廷は一年で合計54件の各種知的財産権案件を受理したが、そのうち二審案件は7件、再審申請案件は37件(国家知識産権局専利復審委員会が申請した再審案件7件を含む)、請訓案件10件となっている。2002年から引き続いている案件は17件、そのうち、二審案件が6件、提審案件が1件、再審申請案件が7件、請訓案件が3件。ふたつの合計が71件となっている。結審した各種案件が合計54件、そのうち二審案件は10件、提審案件が1件、再審申請案件が33件、請訓案件が10件となっている。この他に、当事者からの書簡処理が180件、当事者の訪問、書簡の受け付けが述べ100人となっている。下級法院の研究案件、業務コンサルティングの受け付けが20件あまりとなっている。最高人民法院は本年度主に「84」消毒薬の不公正競争案件、LGエレベーターの商標権侵害案件(訴訟中止を裁定)、Eli Lilly and Company(米国)が江蘇豪森薬業持ち株有限公司を専利(特許)権侵害で訴えた案件、福建省喬丹体育用品有限公司が晋江市陽新体育用品有限公司を不公正競争で訴えた紛糾案件などの二審案件を審理し、「張小泉」商標権侵害案件、「五朶金花」の著作権案、谷建芬著作権案件などの請訓案件に答え、国家郵政局の著作権再審申請案件、郭天翔の著作権再審申請案件などの再審申請案件を適切に処理し、北大方正、藍星集団など全国人民大会代表の建議案件をすみやかに手続きした。そのうち一部の案件は知的財産権界で長年にわたって論争が行われてきたもので、審判の指導的意義を持つ典型的な案件となっている。
人民法院は知的財産権に対する行政司法保護では、法に基づいて知的財産権の行政法執行に関する司法再審査職能を履行し、正しい行政法執行行為を助け、少数の違法行政行為を正すことを主としている。2003年に全国の地方法院は合計で298件の専利(特許)行政案件を受理し、304件が結審した。受理した商標行政案件は71件、結審したものは66件。受理した版権行政案件は20件、結審したものは22件となっている。全体的に見れば、知的財産権の行政訴訟案件は年々増加しており、特に目立っているのが、新しく改正された専利(特許)法と商標法で、全ての専利と商標の授権·維持過程を司法終局裁決とするよう改正した後に、専利(特許)復審委員会と商標評審委員会が被告の訴訟案件が急激に増加し、2003年北京の第一中級法院で受理した専利(特許)再審と無効の行政案件は259件、商標評審と取消の行政案件は66件となった。
人民法院は知的財産権に対する刑事司法保護をさらに拡大した。1年間に受理した知的財産権の刑事案件の合計は401件で、結審したものは399件、判決によって発生した効力は551人に及んだ。結審案件は主に商標権侵害犯罪に集中し、合計329件で、知的財産権犯罪案件全体の82.45%を占めている。その次が営業秘密侵犯で、計50件、12.53%を締めている。その他の知的財産権犯罪は比較的少なく、著作権に関わる犯罪が21件、専利(特許)偽造罪が1件である。ここでつけくわえるべきなのは、現在の司法統計は知的財産権の刑事司法保護の実際の情況を正確に反映することができていない点である。主な原因は現実の大量の知的財産権侵犯犯罪は刑法に規定された悪質な偽造商品の生産、販売罪と不法経営罪によって罪状が確定され処罰されているので、例えば著作権に関する犯罪の多くは不法経営罪として処理されるためである。全体的に見れば、知的財産権の刑事案件はまだ極めて少ないが、比較的早いスピードで増加しており、上海法院だけでも1年に受理した一審の知的財産権刑事案件は48件、結審したものは51件で、2002年に比較してそれぞれ41.2%と54.5%増加している。また複数のものによる共同での犯罪、事業機関による犯罪が比較的多く、犯罪の手法が複雑で、多くが知能犯的な犯罪になっている。継続的な犯罪と広い地区にまたがる犯罪が突出して見られる。判決による服役刑期が比較的短く、多くは3年以下となっているが、罰金処分となっている情況も多い。
二、典型的、疑う余地の無い案件が絶えず出現し、新たな類型の案件が次々と現れている。
2003年、各級法院は法律、法規と司法解釈の規定に厳密に基づいて、争議の規模と社会的影響が大きな複雑かつ疑う余地の無い案件と新たな類型の案件を適切に結審させ、十分な法的効果と社会効果を挙げた。多くの案件の裁判は中国の知的財産権保護における優秀なモデルケースであると同時に強い実践的指導意義を備えるものとなり、関連の立法と司法解釈に対して実践的経験を提供するものとなった。
(一) 著作権案件
新しい作品類型に関する案件が増大した。北京第二中級法院の一審、北京高等法院の二審で争われた黒竜江省鐃河県の四排赫哲族郷人民政府が郭頌、中央テレビ局などを著作権侵犯で訴えていたケースでは、人民法院は法律で明確、具体的に規定されていない民間文学芸術作品に対して保護を行うことを試み、民間音楽の曲調は民間文学芸術作品に属するものだと明確にした。このケースでは「烏蘇里船歌」を赫哲族の伝統的民間曲調に由来する改編作品であると認め、権利主体、訴訟代表、権利内容と保護法方などの問題の解決を試みた。青海西寧中級方院が受理した大通回族土族自治県橋頭鎮下廟一村の117人の村民が青海僑佳音像有限公司を訴えたケース、甘粛省音像出版社の民間演芸公演の権利侵害訴訟ケースは、社会的影響が大きく、法院の支持の下で当事者は調停協議を結び、青海僑佳音像有限公司は「青海民間演芸」のVCDの製作、発行を停止し、民間n演芸公園に参加した117人の農民に13000元の補償金が支払われた。雲南高等法院で結審した趙続康が曲靖巻煙草廠を著作権侵犯と不公正競争で訴えていた紛糾案は、映画のシナリオ文学作品「五朶金花」の名称が煙草の商標名として使用されたことが権利侵害にあたるか否かが問題となり、これは中国では初めての作品名称が著作権を持つ事ができるか否かが争われたケースとなった。法院では同ケースの作品名称は単独では作品となることができず、原告と被告との間にも不公正競争関係は存在しないとして原告の訴訟請求を取り下げた。北京第一中級法院が受理した、北京楓丹麗舎不動産開発有限公司が北京天竜苑不動産有限公司を著作権侵害で訴えたケースでは、建築作品の認定と権利侵害の判定および権利侵害の救済などが問題になった。河北高級法院で結審した王小慧が石家庄市の上水道プロジェクト指揮部弁公室と曲陽県建来石材彫刻有限公司を著作権侵害で訴えたケースと、安徽高級法院で結審した南京新世紀彫塑有限公司が倪永茂などを著作権侵害で訴えたケースは、どちらも都市景観における彫塑作品の保護に関わる問題だった。
権利人が保護とその法で定められた新しい権利類型を重視するようになった。北京第二中級法院で結審した中国音楽著作権協会が広州網易コンピューターシステム有限公司、北京移動通信有限責任公司を情報ネットワーク伝達権の侵犯で訴えたケースでは、ネットワーク環境においていかにISP、IAP、ICPの三者の関係を調整し、現行の法律環境と技術発展の状況下でネットワークサービス企業が民事責任を負うべきか否かという問題に対して認定を行った。同ケースは「最高人民法院広報」にも収録されている。北京第一中級法院で結審した正東レコード有限公司が純音歌舞公司を著作権侵害で訴えたケースは、「カラオケ店」の機械の演奏権侵害に関する問題である。北京第一中級法院が受理した正東レコード有限公司が世紀悦博公司を訴えたケース、上海第二中級法院が受理した華納国際音楽持ち株有限公司(台湾)が上海市榕樹下コンピュータ有限公司を訴えたケース、四川成都中級法院が受理した正東レコード有限公司が四川公用情報産業有限責任公司を訴えたケースはみな未許可でネット上で音楽のダウンロードと視聴サービスを提供し、レコード製作者の著作隣接権侵害に関わる問題である。北京第一中級法院が受理した中国音楽著作権協会が長安デパートを著作権侵害で訴えたケースは、BGM使用がラジオ放送権を侵害するか否かに関する問題だ。
権利侵害判定の分野では、異なる作品の使用方法に基づいて、法律に則った論理を採用している。北京第一中級法院が受理した九歌泰来公司が総政話劇団、長安影視公司などを著作権侵害で訴えたケースは、映画「激情の燃える歳月」が小説「父の都会入り」の内容、対話を剽窃したか否か、といった問題で、法院ではどちらの作品も部分的なエピソード、対話などで類似の部分が見られるが、その割合は大変小さく、実質的な類似とはいえないと判断した。安徽高等法院で結審した胡躍華が羊城晩報者を著作権侵害で訴えたケースでは、被告は原告が投稿した「女性記者の薬物販売体験の7日間」の関連の文字、地点、人名の変更および関連の図と説明などこの作品の内容に対して独断で変更を行い、またその創作の背景、内容および全体·細部にわたって作者の実際の思想表現に違反して、原告が持つその作品に対する変更権と作品全体の整合性保護の権利を侵害したと認定した。安徽合肥中級法院で結審した北京東方恒潤科技有限公司が合肥市科技館を著作権侵害で訴えたケースでは、被告が館内で原告が撮影·製作した「史上空前の冒険」と「森林探検」の2本の映画を有償で放映した行為を、法院は被告による、当該機関が非営利目的の社会公益事業機関であり、館内で短時間、科学知識普及の教育目的として行ったとの抗弁理由を合理的使用にはあたらず、また法定の許可にも適合せず、著作権者の関連権利の侵害にあたると認定した。寧夏高等法院で結審した崔振璽が固原市人民政府を著作権侵害で訴えていたケースでは、法院は作詞者の原告と作曲者が歌詞と曲を別々に使用することができないとする特別な契約がなされていない情況の下で、第三者が作品の曲の部分のみを使用することは作詞者の権利の侵害にはあたらないと判断した。遼寧沈陽中級法院で結審した遼寧益通機械汽車情報有限公司が遼寧省情報センターを著作権侵害で訴えていたケースでは、法院は原告がそのホームページの会員エリアで発表した文章は特定の会員のみを対象に有料で提供されるもので、「ネットワーク上での作品の伝達」にはあたらず、被告に転載、編集の権利はないと認定した。
著作権案件の審判はますます社会の関心を集めるようになっており、一連の大型争議、社会的影響の大きな案件は結審され、十分な法的効果と社会的効果を挙げた。例えば、北京高等法院が審理した全国数十社の定期刊行物企業が重慶維普公司を著作権侵害で訴えたケースは、現在国内で当事者が最大となる著作権侵害に関わる案件の一つで、メディアの広汎な関心を集めている。上海高級法院で結審した作品「蛍光灯下の歩哨」の署名権のケースと、上海第二中級法院が調停した小説「陳香梅伝」の著作権侵害ケースも世論の焦点となった。
(二) 商標権案件
商標民事訴訟のうち、最も目立つ現象は権利衝突に関する案件である。
登録商標と企業名称の衝突に関する案件はますます多くなっている。2003年に上海法院が受理したこの種の案件だけで10件を超え、あるものは歴史的な要因から審理が大変難しい情況となっている。遼寧瀋陽中級法院で結審した大廠回族自治県福華肉類有限公司が呼建剛を商標権侵害と不公正競争で訴えたケースでは、法院は被告が「瀋陽市皇姑区京福華酒店」の企業名称を登録するより前に、原告の「京福華」飲食類の商標が既に登録されまた現地瀋陽では有名であったと認め、被告の登録行為は不公正競争にあたり、被告が店の看板などにおける経営·宣伝活動で「京福華肥牛」の名称を使用した行為は原告の商標権の侵害にあたるとして、被告の支払った営業税に基づいてその売上高を算出した後に飲食サービス業の合理的利潤率に照らして賠償金額を確定した。江西高級法院で結審した南昌ケーブル有限責任公司が江西?昌ケーブル有限公司を商標権侵害で訴えたケースでは、法院は被告が原告の「?昌」登録商標と同じ文字を企業名称とし同じあるいは類似の商品で使用し、原告の「?昌」ブランドシリーズの製品が省内ではかなり有名で、被告の法定代表者が原告の系列企業を借りて経営していたことがあり、また契約に基づいて合法的に「?昌」ブランド製品を経営し、被告は経営において原告の系列企業の名称を自分の名称と併用したことは、関連の公衆に原告製品との誤解を容易に与えることになり、商標権の侵害にあたると認定した。陜西高等法院で結審した菲林投資有限公司が西安愛家商貿有限公司を商標権侵害で訴えたケースでは、法院は原告の「愛家」登録商標の制定するサービス項目第35類と被告の従事する商品販売の商業企業では提供するサービスに大きな違いがあり、度名時あるいは類似のサービスにはあたらず、関連の公衆に容易には誤解を与えがたいとして原告の訴訟請求を取り下げた。上海第二中級法院の一審で争われた杭州張小泉剪刀(ハサミ)廠が上海張小泉刀剪店などを商標権侵害と不公正競争で訴えたケースでは、法院は被告は商標権侵害と不公正競争にはあたらないとの判決を下した。
登録商標と地理標識の衝突問題に関する案件も出現した。上海第二中級法院が受理した浙江省食品公司が上海市泰康食品有限公司をその「金華火腿」の登録商標の専用権を侵害したとして訴えたケースでは、原告は「金華火腿」登録商標の専用権を主張したが、被告は販売しているのは「金華火腿」の地理標識を標示した商品だと主張した。
既に登録された商標が他のそれより前に登録された商標の商標権を侵害するか否かについての問題では、争議が比較的大きくなる。北京高等法院が調停処理した北京恒昇遠東電子計算機集団が北京市恒生科技発展公司などを商標権侵害で訴えたケースの後で、北京第一中級法院は成都市雅紳精細化工公司が天津漢高洗滌剤有限公司を商標権侵害で訴えた同様のケースを再び受理し、「威白」と「威白」の登録商標の間で権利侵害の争いとなった。江蘇高級法院で結審した丹陽市合成日用化工廠が常州市五兔王?水(のり)廠、蒋文中を商標権侵害で訴えたケースでは、法院は被告はそれぞれ別に登録されている「玉虎」、「兔王」を組合わせて用いる際に「玉」と「兔」の文字を特別に強調して「虎」と「王」の文字を薄く表記していることは、権利の濫用にあたり、原告の「玉兔」登録商標に対する侵犯にあたると認定した。四川高等法院で結審した四川小天鵝飲食文化有限責任公司が重慶小天鵝集団成都小天鵝飲食文化有限公司を商標権侵害で訴えたケースでは、法院は原告の「天鵝」の文字図形の組合わせは商標の全体判断の原則に照らして、当該商標の特徴の顕著性を結合させ、被告は関連の文字を使用しているだけで、消費者に誤解を与えるには到らず、商標権侵害にはあたらないと認定した。ただし被告がサービス項目のなかで登録した「天鵝」の図形商標は原告が既に登録している「天鵝」図形の商品類では用いることができず、被告がその製品包装パッケージ上で使用している天鵝(白鳥)の図形と原告の「天鵝」図形商標は非常に似ており誤解を与えると考えられ、商標権の侵害と認められる。
○ 小野食品興業 新含気 http://www.onoshoku.co.jp/onmnu316.html
登録商標と外観設計専利(特許)との衝突の案件では、人民法院は法に照らして優先権を保護する。四川高等法院で結審した北京葡萄酒廠と四川省瀘州東方酒廠が四川瀘州栄成華酒業有限公司を商標権侵害で訴えた紛糾ケースでは、法律に基づいて、被告が取得した包装用外箱の外観設計専利(特許)は、北京葡萄酒廠が先に獲得していた「中華」文字図形の組合わせからなる登録商標に対抗することはできないと認定した。
商標の合理的使用に関する問題は社会的に注目を集める問題となっている。例えば厦門華僑電子企業有限公司と四川長虹電器持ち株有限公司等の間でHDTVマークの使用についての紛糾が、上海、アモイ、北京、広州の4つの中級法院でそれぞれ受理されている。小麦粉製品に「雪花粉」という呼称を使用することについて、内蒙古杭後金穂食品工業有限責任公司は内蒙古巴盟中級法院に商標権侵害の訴訟をおこしただけではなく、国家工商行政管理総局を相手取って北京第一中級法院で行政訴訟を起こした。江蘇高級法院で結審した徐州漢都実業発展有限公司がTCL集団持ち株有限公司を商標権侵害で訴えたケースでは、法院は被告が「TCL王ブランド」カラーテレビのセールスで用いた「千禧竜大イベント」というキャッチフレーズは商標として使用されたものではなく、叙述的な単語の一般的な使用にあたるとして、大衆に対して商品の来歴を誤解させるおそれはなく、また他人の商標を用いて不当な利益を得ることにはあたらないとして、原告の「千禧竜QIANXILONG」文字商標の専利(特許)権の侵害にはあたらないと認定した。河北高級法院で結審した張家口市宝通建築関連製品廠が張家口市橋西区?昕建材廠を商標権侵害で訴えたケースでは、法院の二審では「変圧式」という文字は第19類製品の分類では既に登録された商標で、当該の製品分類における分類のひとつでもあり、被告が自社製品の紹介と販売時の領収書で「変圧式」という文字を使用したのは製品の種類を区別するための合理的な使用であり、原告に禁止する権利はないと認定した。上海第二中級法院が受理した日本の小野食品興業株式会社が山東緑潤食品有限公司などを商標権侵害で訴えたケースでは、原告はその開発した食品加工技術を「新含気」調理技術と名付け、当該技術を用いて加工した製品を「新含気」調理食品と命名しまた「新含気」を商標として登録しており、被告が製品包装で「新含気」という標示を用いているのは商標権侵害にあたるとして訴えていた。
商標保護理論の根底に触れる問題も実際のケースで出現している。北京第一中級法院が受理して結審した、香格里拉国際飯店管理公司が黄慧娟を商標権侵害で訴えたケースでは、被告は原告が専用権を持つ商標「香格里拉」、「SHANGRI-LA」を組合わせて若干の変更を加えた後にレストランの看板として外観設計専利(特許)を申請したが、実際の経営では使用しておらず、法院はこの行為を権利侵害と認定した。このケースは権利侵害問題に対して広汎な議論をよびおこしたが、他人が著作権を有する作品を商標として標示し登録する類似の問題も存在する。江西景徳鎮中級法院で審理された秦麗蓉が楊嘉玉などを商標権侵害で訴えたケースでは、商標権所有者が類似商標に対して持つ禁止の権利と許可の権利の範囲、権利の行使が問題になった。同ケースの被告は同一の製品で原告がその使用を許可済みの登録商標の他に、さらに別の原告の商標に類似した方表を使用しており、被告は原告の許可によって商標の使用権を持っていることに基づいて商標の拡張保護の原理を引用し別の類似商標を用いたと主張し、元々許可を得た商標の侵犯にはあたらないとした。法院は類似商標は原告の登録商標の附属商標ではなく、商標登録者は第三者に登録されていない類似商標の使用を許可する権利はないが、商標の使用許可を得た人を含む第三者が類似商標を使用することを禁止する権利は持つと認定した。
不動産商標およびサービスに関する登録商標の権利侵害のケースも現れている。上海第一中級法院が受理した深?市美地置業(不動産)発展有限公司が上海市竜倉置業(不動産)有限公司などを商標権侵害で訴えたケースは、「香?里」などの不動産商品およびサービスに関する登録商標の権利侵害の問題である。
新改正の商標法では、商標の変更という明らかな偽造·模倣行為のみしか規定されておらず、元の商品の商標を除去した後に、マークなしで再度販売するという形式の偽造·模倣行為に対しては明確な規定を行っていない。江蘇南通中級法院が受理した如皋市印刷機械廠が如皋市軟徳物資有限責任公司を商標権侵害で訴えたケースでは、同法院は被告が原告の販売した「銀雉」ブランドの印刷機械をその商標を除去、改造した後に再び販売した行為について、公衆が生産者およびその生産商品の商標を認知する権利を剥奪し、商標権所有者と使用者の関係を断ち切り、商標権所有者がその商標を標示する権利を直接侵害し損害を与えたとして、原告の登録商標専有権に対する侵犯にあたると認定した。
人民法院が受理した商標案件のうち有名なブランドに関するケースがますます増加している。商標法第13条、第14条、「最高人民法院の商標民事紛糾案件審理に法律を適応する際の若干の問題についての解釈」の第22条、「最高人民法院のコンピュータネットワークドメイン名に関する民事紛糾案件審理に法律を適用する際の若干の問題についての解釈」に基づいて、2001年の7月から、全国の法院で当事者の請求に応じた個別の案件で11の著名商標を認定した。北京高級法院が認定した「du pont」商標(化工、電子など)、上海高級法院が認定した「舒膚佳」(せっけん)商標、浙江高級法院が認定した「紅蜻?」商標(皮靴)、福建高級法院が認定した「?pin」商標(衣料品)、山東?坊中級法院が認定した「仙霞」商標(衣料品)、山東青島中級法院が認定した「白雪」商標(文具)、湖北高級法院が認定した「立邦」(塗料)、「国美(国美電器)」、「勁牌」商標(白酒)、海南高級法院が認定した「再林」商標(薬品)、河北高等法院が認定した「撒可富」商標(化学肥料)である。
商標の行政訴訟に見られる主な問題は同一あるいは類似商品、同一あるいは近似の商標の判定および原産地名称、通称の判定などだ。例えば北京第一中級法院が受理した林麗貞が国家工商行政総局商標評審委員会や第三者の上海永和大王餐飲有限公司、世紀投資有限公司を商標の取消を求めて訴えていた行政紛糾案件では、「永和」が豆乳類製品の原産地名称にあたるかどうかが争われた。北京第一中級法院が受理した陸豊市全美実業有限公司が国家工商行政総局商標評審委員会、第三者の中山凱達精細化工持ち株有限公司を商標の取消を求めて訴えた行政紛糾案件では、「滅害霊」というのが商標の通称となるかどうかが争われた。
(三)専利(特許)権の案件
専利(特許)民事訴訟では、発明と実用新型専利(特許)の保護範囲の確定、同等原則の適用、公知技術の抗弁などが依然として審判での難点となっているが、外観設計専利(特許)無効の行政案件における専利(特許)性の判断と、権利侵害訴訟における類似性の判断が、現在法院の専利(特許)案件審判における最も中心的かつ緊急な問題のひとつになっている。例えば、外観設計専利(特許)に創造性の基準を導入するべきか否か、「美感」といった基準を保留するべきか否かといった問題は、理論的に大きな議論を引き起こしている。また同じあるいは性質の似通ったものに対して判定を行う主体は、一般の消費者なのか、特定の消費者、または専門のデザイナーが行うのか、また全体的な判断と細部の判断という判断方法の、具体的な適用と関係の問題についても、現実に大きな争点となっている。
関連技術原理の理解という基礎に基づいて、知的財産権の司法官は技術比較の問題に関して独立で判断を行うよう努力している。重慶高級法院で結審した重慶博徳現代厨房設備有限公司が重慶峡江燃気具有限公司を専利(特許)権侵害で訴えたケースでは、法院は関連の辞典、技術参考書などに基づいて解釈を行い、権利侵害とされた製品で使用されている可動式設備と原告の専利(特許)で採用しているピストン構造とは違うもので、機能的にも明らかな違いがあり、一般的な技術者ではなくても簡単に交換することが可能であることから、同等技術の特徴を持たないと認定した。
過去に実際の審判で運用されながら法的な根拠がなく大変大きな争議をもたらした権利侵害判定の原則と方法について、各地の知的財産権司法官は既に基本的な共通認識に到達している。例えば「不必要なクレーム記載(原文:多余指定原則)」を適用して専利(特許)権侵害を判定することを廃止するべきだというものがある。陜西高級法院で結審した西安沙爾特宝電気有限公司が西安鉄路牽引電器研究所を専利(特許)権侵害で訴えたケースでは、一審法院は「一種の機械制御機器」の実用新型専利(特許)の独立権利要求における「警報装置」は技術的特徴を必要としないと判断し、二審法院はいわゆる「不必要なクレーム記載(原文:多余指定原則)」の適用を排除し、法律に照らして被告は権利侵害には多余指定原則(中文)」あたらないと認定した。
人民法院は専利(特許)関連の行為について法律に基づいて正確に定義を行う。福建高級法院で結審した福建匯天生物薬業有限公司が寧夏啓元薬業有限公司を専利(特許)権侵害で訴えたケースでは、原告の「山?精製配合技術」の発明専利(特許)に関して、法院は行政機関が行政関連者(原告)の行政許可行為(質量基準に対する指示回答)はそのままで社会的に公開されたことを意味するわけではなく、該当の行政許可の指示回答文書に掲載された技術内容もそのままでは公知技術とは認定されないと判断した。寧夏高等法院で結審した寧夏香山酒業(集団)有限公司が新疆糧油粮集団伊犁金谷酒業有限責任公司を外観設計専利(特許)権侵害で訴えたケースでは、法院は被告が白酒を入れるための酒瓶を第三者に委託しサンプルを提供して製作させたことを、原告が外観設計専利(特許)を有する酒瓶とデザイン形態が基本的に同じであると認定し、外観設計専利(特許)権の侵害にあたると判断した。陜西高等法院で結審した何金洪が西安泰森電機有限公司を専利(特許)権侵害で訴えたケースでは、法院は原告の実用新型専利(特許)の授権日より前の被告の行為は専利(特許)権侵害にはあたらないと認定した。
発明者奨励と報酬に関する案件も増えている。例えば、上海第一中級法院で結審した陳宏遠が上海交運持ち株有限公司を職務発明発明者奨励と報酬に関して訴えた紛糾案件、江蘇南京中級法院一審の呉大新など5人が新光集団有限公司を発明者賞金報酬に関して訴えた紛糾案件が挙げられる。
社会的影響が大きな専利(特許)案件は適切に処理されなければならない。例えば、Eli Lilly and Company(米国)が江蘇豪森薬業持ち株有限公司を「Gemcitabine」薬品の製造方法の専利(特許)権侵害で訴えたケースでは、最高人民法院は二審で、権利侵害とされた製品生産方法と異なる専利(特許)方法に関する技術情報を取得し、かつ品質証明を行うことは専利(特許)権所有者の正当な訴訟権利であり、当事者双方の品質証明あるいは照合を経ていない証拠材料に基づいて鑑定機関が行った検定結果は合法的に有効な証拠とはいえないと明確に指摘して、同ケースを差し戻した。
(四)植物新品種権の案件
植物新品種に関する案件の増加ペースは速いものの、全体的に見ればこの種のケースの審判はまだ経験を模索している初歩的段階にある。特に権利侵害判定の原則と比較方法については、すみやかに結論づけられ明確にされることが求められている。甘粛蘭州中級方院が受理した河南省農業科学院粮食作物研究所が張掖市種子公司を植物新品種権の侵犯で訴えたケースでは、法院は被告が種子管理部門から得た種子生産許可証は品種権所有者の権利に対抗することはできず、案件の部外者(植物新品種の実施が許可された者)が被告に対して種子を割り当てる行為は委託繁殖ではなく、被告は原告の植物新品種権を侵害していると認定した。法院は被告の育種株数、生産量に照らしまた許可された者の利益獲得情況などを参考にして、合理的な利益を確定し本ケースの賠償金額を決定した。安徽合肥中級法院で結審した合肥豊楽種業持ち株有限公司が安徽隆平高科種業有限公司、済源市農業科学研究院などを植物新品種権侵害で訴えたケースでは、当事者の争議の中心は、植物新品種の使用許可契約と関連の植物新品種権および申請権譲渡契約の効力に関する問題にあり、法院は申請権と品種権の変化は原告が持つ独占使用権を妨げないと認定したが、第三者による行為は原告の独占使用権に対する侵犯となるとした。
(五)不公正競争の案件
商業秘密に関する案件がますます増加しており、保護を受ける対象が拡大しつづけているだけではなく、多くの商業秘密権の侵害に関する案件で、まず刑事的プロセスを経た後に権利所有者が再度民事責任を追及し、プロセスの交錯と衝突が起きやすくなっている。上海浦東新区法院が受理した上海世大情報集成技術有限公司などが上海得夢石情報科技有限公司などを商業秘密権侵害で訴えたケースでは、同案の原告がソフトウエアのデータベース構造、ソースコード、目標コードを商業秘密として保護しており、原告は商業秘密権の侵害によってそのコンピュータソフトの保護を図っていた。
不公正競争行為の形式は次々に新しくなっている。上海第二中級法院の一審の中国標準縫製機公司上海恵工縫製機三廠が上海海菱縫製機設備有限公司などを不公正競争で訴えたケースでは、被告は原告が登録商標登記において企業名称で用いた字と、原告の企業名称中の字を自分の商標として登録しようとした行為について、法院は被告の行為は不公正競争にあたるとの判決を出した。上海第一中級法院で結審した上海市第一百貨商店持ち株有限公司が上海栄立商貿センターを不公正競争で訴えたケースでは、被告は原告の名義を偽って展覧販売会を開催した行為が争われた。福建寧徳中級法院が受理した寧波華能国際貿易有限公司が福建天竜電機有限公司を不公正競争で訴えたケースでは、原告は被告が原告の商品バーコードを侵犯したと主張した。上海第二中級法院が受理した上海世界博覧会事務協調局が上海弘輝不動産開発有限公司を著作権、特殊標識権、専有名称権の侵害で訴えたケースでは、「万国博覧会」マークに類似したマークと「万国博覧会」という宣伝キャッチフレーズなどを使用する行為が争点となった。福建厦門中級法院が受理した厦門精通科技実業公司と程麗敏などの不公正競争のケースでは、競業禁止と賠償要求の問題が争われた。江蘇高級法院で結審した南通豪達電器有限公司が江蘇浩大銅業持ち株有限公司を不公正競争で訴えたケースでは、法院は被告が過失から原告のホームページを覆い隠した行為を不公正競争にあたると認定した。北京第一中級法院が受理した三七二一科技有限公司が百度オンラインネットワーク技術(北京)有限公司、北京百度網信科技有限公司を不公正競争で訴えたケースは、被告が技術手段という非伝統的な不公正なビジネス手段を採用することで、不公正競争を実現しようと目指した案件だ。また公用企業が自身の持つ郵政を利用して競争を制限しようとするケースも現れた。一例は北京第一中級法院が受理した賽恩(天津)新技術有限公司が中国華北電力集団公司北京供電公司を不公正競争で訴えたケースである。
山東高級法院で結審した山東竜大企業集団有限公司が莱陽魯花濃香花生(落花生)油有限公司を不公正競争で訴えたケースでは、法院は「竜口粉絲(はるさめ)」という現地企業で広く通用している有名な製品名称自身は原告の有名商品と認定はせず、原告が生産する「竜大」ブランドの竜口粉絲を有名商品と認定した。有名商品に特有の包装に対する保護は包装の組成部分以外の包装全体に対して単独で行うべきで、包装の使用によって他の商品との混同が起こるか否かを判断する際に、たとえ包装中の目立つ部分が同じか類似しているとしても、その他の目立つ部分あるいは目立たない部分が消費者の商品に対する印象を決定するなら、一般に混同される可能性を認定するべきではないとした。上海第二中級法院が受理、結審した世界知的所有権機関(WIPO)の仲裁·調停センターのドメイン名移譲の裁決を不服として引き起こされたドメイン名の帰属に関する紛糾案件は、世界知的所有権機関の仲裁·調停センターのドメイン名移譲の裁決を不服として起こされた初めてのドメイン名民事紛糾ケースで、法院がこの種の紛糾を受理するべきか否か、当事者の挙証責任などに関する新しい問題に関連している。
最高人民法院も二審案件の審理を通じて、不公正競争案件処理の具体的な法律適用の問題の一部を明確にした。北京地壇医院が江蘇愛特福薬物保健品有限公司を有名商品固有の名称の偽造·模倣で訴えたケースでは、最高人民法院は有名商品固有の名称とは関連の商品に通用しているものを指すのではなく、明らかな区別性という特徴を持つもので、使用することによって消費者に同商品と他のメーカーの同類の商品を区別させる働きをもつ商品名称だと認定した。「84」消毒薬は原告が研究開発したものだが、関連の技術移譲の中でその名称に対しては何の取り決めも成されておらず、同類商品の名称として普遍的に使用されており、しかも各企業は使用時にそれぞれの商標と「84」消毒薬という文字を組合わせて使用しており、「84」消毒液という名称だけではその商品の来歴を区別することができず、既に通称となっていると認定した。福建省喬丹体育用品有限公司が晋江市陽新体育用品有限公司を不公正競争で訴えたケースでは、最高人民法院は、企業の規範的ではない企業名称の使用が法律で定められた行政責任問題に関わる場合は、それによって損害を受けた関連の民事権利を保護せざるを得ないと明確にした。企業に規範的ではない商標使用の行為が見られる時も、使用者の商業的名誉の存在と、関連の合法的権利の保護を否定することはできない。経営者の主観上は過失が存在し、製品包装と他人が先に製品上で使用した包装との同一性あるいは相似が混同か誤解を生み出すに足りるならば、先に存在した製品を有名商品と認定することができる。包装物に特有の包装の権利侵害によって、購買者が包装された製品を混同あるいは誤解し、その包装物が慣行として製品と一緒に販売される場合、権利侵害行為を行った者が権利侵害の包装物の製品販売で得た利益を、権利侵害の賠償金額を確定する上での重要な根拠とすることができる。
(六)知的財産権契約の案件
2003年に法院が受理した技術契約案件は2000年と比べて減少したが、著作権と商標に関する契約の紛糾は増加している。南京中級法院で一審、江蘇高級法院で結審した江蘇聚栄制薬集団公司が南京先医薬科技開発有限責任公司を技術契約の紛糾で訴えたケースでは、国家薬品監督管理局が新しく発表した行政規則が従来8年とされていた二類の新薬の保護期間を5年の監督期間と変更したことなどから、これより前に双方が結んだ技術契約の権利·義務内容に直接的な影響に影響されていた。法院は同規則の発表は不可抗力にあたると認定し、当事者の契約履行上一定の影響を与える可能性はあるが本質的な影響を与えるにはいたらず、契約の目的が根本的に実現不可能とはなっていないとして、被告の契約解除の反訴請求を退けた。陜西西安中級法院で結審した陜西亜新広告伝播有限公司が福州緑野音像有限公司、厦門音像出版社を著作権侵害で訴えたケースでは、原告が案件の部外者に「豹狩り」テレビドラマシリーズの中国大陸部でのID、DVD、VCD、ビデオテープの8年の出版発行権を授与し、被告は同部外者から授権を得て出版、発行行為を行っていた。法院は原告の授権は期限が決まっているのみならず、テレビ局で放映した後は市場で販売することが可能だという条件が付いており、契約された著作権使用許可契約は著作権の譲渡契約ではなく、部外者は著作権者から最許可に対する明確な授権を受けておらず、被告の合法的に授権されたとする主張は成立せず、原告の著作権に対する侵犯にあたると認定した。重慶高等法院で結審した重慶市梅渓?菜有限公司が重慶市渝派?菜有限公司を商標使用許可契約に関して訴えた紛糾案では、契約違反と権利侵害の競合と、商標権の限界の問題が争われ、法院は第三者が被告の製品を入手し同製品を原告の市場分野に販売した行為は、被告の営業行為にはあたらないとし、原告と被告の間に市場区分協議に対する契約違反の事実は存在しないと認定した。
(七)訴訟前臨時措置に関する案件
人民法院は新改正の知的財産権に関する法律と関連の司法解釈に基づいて、積極的かつ慎重に訴訟前臨時措置を採取している。しかしそれぞれの地区の法院で、これら案件の法律執行の原則と基準は必ずしも一致しているわけではない。上海法院が1年に受理した訴訟前の侵害行為停止命令申請の案件は13件あり、訴訟前の権利侵害行為裁定が出されたものは11件、41件の案件では訴訟前あるいは訴訟中の証拠保全措置が採られた(現在全国規模での司法統計の結果はまだ存在しない)。北京法院では現在のところ正式に訴訟前の禁令措置が採られた案件はない。最高人民法院が2003年末にEli Lilly and Company(米国)と常州華生製薬有限公司の間で争われた専利(特許)権侵害紛糾案件の管轄指定の指示要求に対する指示回答では、以下のように明確に指摘されている。訴訟前に関連行為の停止を命令する措置は当事者双方の重要な経済的利益に関わるため、積極的に行うと同時に慎重に行うべきである。権利所有者が提出した、訴訟前に申請人による関連の行為を停止させるための申請と、当事者が人民法院に対して提出したこの件に対する裁定の復議(不服審査)申請を審査する際には、申請人による権利侵害が行われている可能性を十分判断する必要がある。特に専利(特許)権侵害のケースでは、もし申請人による行為が書面上は権利侵害にあたらないように見えても、より詳しく比較的複雑な技術比較を行って初めてその行為の判定を行うことができる場合には、関連の措置を裁定することは適切ではない。申請人が法の規定に基づいて他の案件に権利不侵害の確定訴訟を起こしているか、案件関連の専利(特許)の無効宣言請求を既に提出している場合も、申請人の主張する事実と理由に対して審査を行い、関連措置を慎重に採取する必要がある。
(八)権利不侵害確定の案件
最高人民法院が2002年7月に蘇州竜宝生物工程実業公司と蘇州朗力福保健品有限公司の専利(特許)紛糾案件で、人民法院は権利不侵害確定の訴訟申請を受理することができると指示回答したのに続き、北京第一中級法院が2003年に受理した中国社会科学出版社がFrederickWorne社(英国)を商標権利不侵害の確定の請求で訴えたケースでは、原告はその出版した「ピーターラビット」シリーズ図書が被告の商標権を侵害していないことを確定する請求を提出した。これは著作権不侵害確定に関する初めてのケースで、同ケースはまだ一審の審理段階にある。北京第二中級法院が2003年に受理した国家海洋局海洋出版社が周小璞など31人を相手に起こした著作権不侵害の確定請求のケースは、初めての商標権不侵害確定の案件で、同院の起訴取り下げ裁定は既に法的な効力を生じている。権利不侵害の確定訴訟は全く新しいタイプの訴訟であり、多くの明確にされるべき問題が存在している。最高人民法院が2003年末に処理したEli Lilly and Company(米国)と常州華生製薬有限公司の専利(特許)侵害紛糾案件の管轄指定の指示要求に対する指示回答では、同一の法的事実あるいは法的関係に対して提起された権利不侵害確定訴訟と訴訟前臨時措置の案件と、権利侵害訴訟でプロセスがつながっている案件の管轄移譲と審理合併の問題を解決した。しかしこうしたケースでは管轄確定の根拠、受理条件と裁判形式および訴訟費用の負担などの問題で明確にされるべき問題が依然として存在する。
三、法律に則って司法解釈的文書を起草し、訴訟制度の整備を引き続き行う
2003年、最高人民法院の民事第三法廷では1件の司法解釈の改正と、2件の知的財産権の司法解釈の起草業務を担当し、2件の専利(特許)紛糾案件に関わる管轄指定の指示回答を制定した。司法解釈の起草過程では、調査、研究作業を重視し、座談会、意見公募など多くの手段を用いて多方面の意見を極力聴取し、司法解釈制度の規範化と、司法解釈起草業務の民主性と透明度の向上に努めた。地方法院も知的財産権の訴訟精度の具体的措置の整備を積極的に検討し全力で実行した。
1 ネットワーク著作権に関する司法解釈を修正した。中国はWTO加盟に適応する必要から、著作権法に対して比較的大きな修正を行い、多くの新しい内容を付け加え、多くの条文が改められ、元の法律に基づいて作られた司法解釈も修正された。著作権法ではネットワーク伝達権の保護方法は国務院が別途制定すると規定されているが、起草から発表までにはまだ時間が必要とされる。関連の行政法規があるとしても、人民法院の審判した案件に見られた特殊な問題は司法解釈で規範化を行う必要がある。法院のネットワーク著作権の案件の審判に法律を適用する際に、連続性と法律文書の一致性を擁護するために、2000年12月に公布された「最高人民法院のコンピューターネットワーク著作権の紛糾案件に適用する法律に関する若干の問題の解釈」の関連条文に修正を加える必要がある。このため、最高人民法院審判委員会は2003年12月23日に改正決定を討論して可決し、後に改正されたネットワーク著作権に関する司法解釈を公布した。
今回の改正は従来の司法解釈の10条のうち5条にわたり、また1条付け加えている。改正後の司法解釈に新しく付け加えられた2項目の重要な内容は次の通り。(1)改正後の著作権法第49条、第51条に規定されている「訴訟前の臨時措置」制度に基づいて、ネットワーク環境下での「禁令」適用の規定を付け加え、ネットワークサービスプロバイダーの権利侵害行為に対して、著作権者が「訴訟前に人民法院に関連行為の停止と財産保全、証拠保全の裁定を申請することを可能にし、提訴時に侵害の停止、妨害の排除、影響の除去の裁定を先に申請することが可能になるため、人民法院はこれを許可するべきである。」とされている。こうした措置はネットワーク環境下でネットワーク権利侵害の海賊版を取り締る際に重要な意義を持っている。(2)ネットワークサービスプロバイダーが他人の著作権を故意に避けたり破壊したりする技術保護措置をアップデート、伝達、提供することに対する法的責任を増加した。改正後の司法解釈第7条の規定では、「ネットワークサービスプロバイダーが他人の著作権を故意に避けたり破壊するために専門に用いる技術保護措置の方法、設備あるいは材料をそれと知りながらアップデート、伝達、提供した場合、人民法院は当事者の訴訟請求と具体的な情況に照らして、著作権法第47条第(六)項の規定に従って、ネットワークサービスプロバイダーの民事権利侵害責任を追及する。」と規定している。この他に、ネットワークサービスプロバイダー、特にホームページは特定の機能において新聞·雑誌などと同じ機能を持つことから、全てメディア作品などの情報製品のメディアということができると同時に、著作権者の保護と社会大衆の情報取得に対するニーズとの間で利益のバランスを保ち、急激に発展する情報ネットワーク業のニーズに適応することを保障し、ネットワークでの転載、編集に関する法的責任の問題の規定は今回の改正では基本的に保留され、著作権法第32条第2款に規定のネットワーク作品伝達における立場を適用することを堅持している。
最高法院によるネットワーク著作権の司法解釈は、これまで既に一部では中国のデジタルミレニアム版権法と称されてきた。この司法解釈に基づいて中国の方印ではすでに100にのぼるネットワーク著作権の紛糾案件が審理され、中国のネットワークシュミレーション世界での著作権などの民事関係を有効的に規範化した。同司法解釈の今回の改正により、ネットワーク環境下の著作権司法保護規制は更に整えられ、中国が版権産業、情報ネットワーク産業など振興産業の発展に役立つ司法の保障の環境を提供することとなった。
2、専利(特許)権侵害判定基準の司法解釈稿を起草した。現行の司法解釈は専利(特許)権侵害の判定基準などの問題に対する言及はあるものの、個別の問題に対して散在する解釈に過ぎず、系統的、全面的な解釈に欠けており、既にある規定もさらに解釈を厳密にする必要がある。一部の地方法院ではある種の専利(特許)権侵害判定の原則と方法を運用しているところもあるが、明確な法的根拠がなく、常に疑問が投げかけられており、更に総括し向上させる必要がある。この他に、専利(特許)案件の審理は多くの具体的な技術比較の判定原則と方法と関わりを持っており、専利(特許)法とその実施細則でこれに対して具体的な規定を出すことになるだろう。公正、有効、合理的に専利(特許)権を保護し、専利(特許)侵害案件の具体的な司法基準を明確にし規範化、統一するために、2003年7月初めに最高人民法院は同院の調査研究と各地の法院の協力による調査研究で提出された意見と建議に基づいて、ここ数年の一部の地方法院による審判の実践経験の総括と指導的意見、また関連の専門家、学者による研究成果を吸収し、知的財産権国際公約の関連規定に基づいて、同時に国外の関連の法律と法院の判決を踏まえながら、「最高人民法院の専利(特許)権侵害紛糾案件に関する若干の問題の規定(草稿)」(計174条)が起草された。合議法廷での討論を経て、同「草稿」は「意見公募稿」へと改正され(計132条3万文字あまり)各高級法院と一部の中級法院へ発表され意見を募集すると同時に、鄭成思、尹新天、李政などの専門家、学者に書面で意見を求めた。また「中国知識産権保護」ホームページで公開された。2003年10月、各方面の意見と建議を取り入れた上で、民事第三法廷第一合議法廷の討論を経て、「最高人民法院の専利(特許)権侵害紛糾案件の審理の若干の問題に関する規定(会議討論稿)」(計71条1万7千文字あまり)が作られ、全国法院専利(特許)審判作業座談会に送られ広汎な議論が行われ、比較的成熟した条文の草案が作られた。この司法解釈の業務は米国の特許商標局を含む国外の関連部門の広汎な注目を集め、関連の司法解釈稿は英語、日本語に翻訳され、米国知的財産権法協会(AIPLA)はまた特別に多くの条文に対して意見を提出した。国家知識産権局、専利代理人協会などの期間と弁護士、特許代理人などの実務者からの反響も大きく、いろんな形式の修正建議が提出された。
3、技術契約法の司法解釈稿をさらに改正する。契約法の実施を徹底し、技術契約の紛糾案件を正確に審理し、ここ数年の技術契約審判の実践で見られた新しい問題を解決するために、最高人民法院民事第三法廷は技術契約に関する司法解釈の起草作業を担当した。1999年10月以来、8回にわたって改められたその解釈稿は、最高人民法院審判委員会民事委員会の二度の会議·討論を経て、2003年6月に計95条1万4千文字からなる「契約法解釈(三)」(内部審査稿)が作製され、同年11月に人民法院報、中国法院ネットなどのメディアを通じて社会に公開され意見公募が行われた。
4、知的財産権案件の審理過程で現れる新しい問題に対して、すばやく指示回答が行われた。東部地区の一部の都市は経済発展が比較的早く、専利(特許)申請数が増加し、専利(特許)紛糾の数量が増加している。こうした新局面に対応するために、最高人民法院は法律に基づいて寧波、蘇州の2都市の中級法院を一部の専利紛糾案件の審理機関に指定し、これによって現在全国で専利(特許)紛糾案件の管轄権を持つ中級法院は48カ所となり、地方の専利(特許)案件の審判能力の配置がさらに合理化されている。2003年4月15日、最高人民法院は「江蘇省高級人民法院の『専利権の無効宣言あるいは専利権の維持の決定を行う既に提訴された行政訴訟の際に、関連の専利権侵害案件の審理を中止するべきか否かに関する問題』に対する指示回答」で、関連の専利(特許)権案件は原則として訴訟を中止しなくてよいが、法院は現有の証拠に基づいて審理の継続と関連の行政案件の判決結果との間に衝突が起こると考えるときには、当事者の書面申請を経て訴訟を中止することもできると明確にしている。2003年7月31日に江蘇高級法院の指示請求に対して、最高人民法院は「TCL集団公司が製品販売促進活動で漢都公司の登録商標『千禧竜』に相似した文字を使用したことは商標権侵害にあたるか否かについての指示請求に対する指示回答」を作製し、製品の販売促進活動で他人の登録商標と同じあるいは相似した文字を使用することが商標権侵害にあたるか否かという問題に対して、登録商標の知名度と顕著性および使用の具体的な情況を考慮して判断するという原則を述べた。
5、地方法院は法に基づいて知的財産権の審判業務を規範化するよう努めている。
(1) 知的財産権案件の集中的管轄の業務が新たな進展を見せた。全国に404ある地方中級法院と3133の基層法院では、現在知的財産権案件と一般の民事案件との比率は比較的小さくなっている。案件の審理の質と効率を保証し、専門の司法官の養成と審判経験の蓄積、業務指導の強化に役立てるために、2000年から最高人民法院は逐次一般の知的財産権案件に対して集中的に管轄を行うようにし、一般的に中級以上の法院で知的財産権の民事一審案件を受理するよう要求している。2003年には広東、雲南、河南、青海、新疆ウイグル自治区、江西、甘粛などの一部の省で規定が作られ、知的財産権案件の受理範囲と管轄基準が明確にされた。2003年に全国の中級以上のほう院が審理した一審の知的財産権案件は既に84.76%となっている。
(2)一部の高等法院では依然として法律と司法解釈の規定に基づいて、審判での実践を結合させて法律適用問題に対する指導的な意見を制定している。例えば北京高級法院は「商標と企業名称の使用の衝突紛糾案件審理での若干の問題に関する解答」を制定し、江蘇高級法院では「知的財産権侵犯行為の停止命令の適用での若干の問題に関する意見(試行)」と「商業秘密案件の審理に関する問題に関する意見」を制定した。浙江高級法院は専利(特許)権侵害の損害賠償、商標権の分野を超えた保護と商業秘密の侵害の案件の審理などの問題で、専門テーマを設定して調査研究を行った基礎に基づいて、「知的財産権民事案件の若干の問題に関する討論総述」を作製し、関連の問題について原則となる指導意見を提出した。
(3)知的財産権審判方法を積極的に改革し、多くの法院は知的財産権の裁判文書作成の改革推進を特に重視している。上海法院は裁判文書作成において、難しい審理は詳細に記述し、簡単な審理は簡潔に記述するという方法を推奨しており、他の法院では裁判文書の中で合議法廷での異なる意見も公開している。河南高級法院では裁判文書の「5つの公開(審判過程の公開、証言·意見の公開、挙証·反対尋問の公開、認証の公開、判決理由の公開)」を強調している。陜西高級法院は主審司法官が開廷前に合議法廷に対して案件の情況を報告し、弱い立場にある当事者に対して訴訟指導を行うことを重視し、法に基づいて釈明権を行使するように強調している。
四、作業会議を開催し、作業の配置と業務指導を拡大する。
1、 全国法院専利(特許)審判業務座談会を開催。中国の専利(特許)審判業務が直面する新たな現状に対応し、専利(特許)司法の実践で目立つ問題を研究、解決し、中国の専利(特許)権侵害判定基準を制定し、専利(特許)審判の全体的水準をさらに向上させるために、最高人民法院は2003年10月27日から29日まで山東省済南で第一回全国法院専利審判業務座談会を開催した。各高級法院と専利(特許)案件の管轄権を持つ中級法院の知的財産権の司法官100人近くが会議に参加した。会議では最高法院の曹建明副院長が重要講話を発表し、専利(特許)審判業務で中国共産党第16期中央委員会第3回全体会議の精神をどのように徹底するか、「人民のための司法」の思想をどのように実践するかについて重要な指示を提出した。また専利(特許)審判は法執行の統一を堅持し、法に基づいた平等な保護の原則を堅持し、適切な保護を堅持し、適切な利益のバランスを堅持しなければならないとする四項目の司法原則を明確にした。会議では「最高人民法院の専利権侵害紛糾案件審理のおける法律適用に関する若干の問題の規定(会議討論稿)」という司法解釈稿を重点的に討論し、北京高級法院、山東高級法院と南京中級法院、佛山中級法院では大会経験を交流する発言も行った。最高人民法院民事第三法廷の蒋志培庭長は会議のまとめとして、専利(特許)審判業務で出会う問題に一連の具体的な法執行の意見を提出した。今回の会議では司法解釈稿と、共同で専門の法執行水準を向上させるという目標について討論し、社会的に大変よい評価を得た。中国の専利(特許)審判業務の新段階を推進する上で大変重要な意義を持っている。
2、 西部地区の法院で知的財産権審判実務シンポジウムを開催。西部地区の法院の知的財産権の審判業務は内実が乏しく、知的財産権に携わる司法官のトレーニングは経費の面から実現が困難となっている。西部地区の知的財産権審判人員の業務レベルを向上させ、東部と西部の知的財産権審判業務での経験の交流を拡大し、全国の知的財産権審判業務の協調的発展を促進するために、最高人民法院は2003年8月12日から14日に青海西寧で西部地区法院知的財産権審判実務シンポジウムを開き、120人以上の西部地区の知的財産権司法官が会議を通じたトレーニングという方式で専門的なトレーニングを行った。
3、 その他にも、全国的、地域的な会議を行った。重慶高級法院が行った第7回全国一部省·市知的財産権審判業務座談会が2003年9月24日から27日まで重慶で開催され、不公正競争の審判理論と実務の問題について、集中的に討論と意見交換が行われた。全国の21の高級法院、31の中級法院と2つの基層法院から計120人あまりの司法官の代表と専門家などが会議に参加し、不公正競争案件の審判問題に関する42本の論文を提出し、これらは会議の後で論文集としてまとめられた。江西高級法院は全省を対象とした初めての知的財産権審判業務会議を開き、陜西高級法院も全省を対象とした知的財産権審判業務座談会を開いた。このように、多くの高級法院は同地区の知的財産権審判業務を研究する専門の会議を開催した。
五、調査研究活動に力を入れ、審判の経験を絶えず総括
1、 専利(特許)権侵害の判定基準の問題に対する研究調査が開始された。専利(特許)権侵害の判定基準の問題は各国が普遍的に直面している司法上の難問であり、現在国際的にも専利(特許)権侵害の判定基準の問題では一応の共通認識に達しているものの、国外の権威的な規範的な文献でさえもこの問題に対して系統的な総括を行っておらず、各国の多くの具体的な問題での手法も一致していない。中国の専利(特許)審判では現在、法執行の原則、基準と方法など多くの問題に直面しているが、そのうち問題が最も多く、難しいのは専利(特許)権侵害の判定基準の問題で、専利法の原則を統一し、専利(特許)の司法水準を向上させる上で大きな課題となっている。このため最高人民法院は「専利(特許)権侵害判定基準の問題」を同院の2003年の重点調査研究課題の一つとし、同院の民事第三法廷が担当して行った。2003年3月末に各高級法院にテレックスが出され、専利(特許)権侵害案件の実際の審判過程での難点や執行上の問題について、案件の実体審理の段階で存在する問題を中心に書面で調査研究報告を提出するよう要求し、同時に各地の法院に対して、調査研究過程では専利(特許)案件の管轄権を持つ一審法院の意見と建議を特に注意して聞き取るようにと求めた。広汎な調査研究を通じて、専門調査報告がまとめられただけではなく、専利(特許)権侵害の判定基準についての司法解釈稿が起草され、調査研究の成果の転化が加速化され、司法解釈の対応性と実効性が保証された。
2、 知的財産権の刑法保護の問題の調査研究が成功裏に完了した。知的財産権の刑法保護問題は最高人民法院の2002年の8つの重点調査研究課題の一つであり、同院研究室、民事第三法廷と刑事第二法廷が共同で担当し、2003年5月に「知的財産権刑事法律保護に関する問題の調査研究報告」の起草作業を完了した。現在の法院の知的財産権侵犯案件の審理システムの現状と法律適用における問題に対して比較的深くかつ系統的な分析が行われており、次に行うべき業務について具体的な対策と建議が述べられ、合計3万1千文字からなっている。同調査研究課題の完成は、中国の知的財産権保護の水準と現状に適合し、WTO加盟条件の要求に適合するような、比較的有効な操作性を備える刑事司法解釈の制定を速やかに行うための業務の基礎を打ち立てた。
3、 地方法院は各種の専門調査研究を適宜積極的に展開している。北京高級法院は「商標民事紛糾案件の審理情況に関する調査研究および規範的意見」を2003年の全市法院知的財産権審判の重点調査研究課題とし、同時に「渉外知的財産権案件の法律適用問題」の調査研究を行った。北京高級法院では他にも「外観設計専利(特許)無効の行政訴訟と専利(特許)権侵害の訴訟のシンポジウム」と「渉外知的財産権案件の法律適用問題のシンポジウム」を開催し、北京海淀区法院は「映像作品製作における監督と製作企業の法的関係のシンポジウム」を開催した。上海高級法院では「知的財産権訴訟における証拠保全問題の研究」の調査研究を完成し、また「舞台芸術作品の版権紛糾案シンポジウム」を開催した。浙江高級法院では「知的財産権審判において適用される証拠規定に存在する問題と原因、対策の分析」という調査研究を行った。重慶高級法院では「反不公正競争案件の審理理論と実践」という調査研究を行った。遼寧高級法院では「全省の知的財産権案件の審判業務の現状と発展情況、および対策」という調査研究報告を、甘粛高級法院では植物新品種の司法保護に関する専門調査研究を行った。福建高級法院の民事第三法廷は、福建省の重点課題である「福建省自主的知的財産権発展戦略対策研究」の調査研究に参加した。
六、業務学習と専門トレーニングを強化し、知的財産権法制度の宣伝と司法分野での対外的な交流を積極的に行う。
各級法院の知的財産権司法官は各種の業務トレーニングクラスに積極的に参加している。「SARS」流行の影響を受けて、最高人民法院が従来予定していた国家法官学院開催による知的財産権トレーニングクラスは実施されなかった。北京、江蘇、広東などの高級法院はそれぞれ専門のトレーニングクラスを組織し、有名な専門家、学者と経験の深い司法官を招いて、知的財産権の法学的理論と審判の実務について講演を行った。多くの法院では集中的に案件の学習、研究討論などを行い、法廷見学と裁判文書の評価などの活動を行った。広西などでは、知的財産権担当の司法官を業務基礎が比較的整っている東部の法院に定期的に派遣して審理に参加させ、経験を学ばせている。各級法院は積極的に契機を設けて、優秀な司法官が国外で学術交流を行ったり、上級法院と各自の法院組織の業務トレーニングに参加することを推奨している。統計によると、30%以上の上海の知的財産権の司法官は、2003年に国内外の専門的な学習の場とトレーニングに参加したという。
多くの法院が各種の法制宣伝活動を行い、知的財産権の審判の影響を絶えず拡大させている。第三回「世界知的財産権デー」と商標法実施20周年を記念して、多くの法院では記念活動を行った。最高人民法院は7つの典型的な知的財産権案件を「人民法院報」と関連のホームページで紹介した。福建高級法院民事第三法廷と同省のテレビ局、福建法制報および関係のメディアは協力して特別番組を制作した。2003年8月、北京市の高級·中級の両法院の知的財産権の審判法廷成立十周年を記念するために、北京市の関連法院では「過去を振り返り、未来を拓く」というテーマで一連の活動を行った。この他に、湖南高級法院と長沙中級法院、河南高級法院と鄭州中級法院はそれぞれ連合して、企業の知的財産権保護についての座談会を開催した。河北高級法院と河北省知的財産権法学会は連合で「専利(特許)権の司法と行政保護についてのシンポジウム」を開催した。青海高級法院と青海省知的財産権局は連合で知的財産権の常識についての宣伝パンフレットを作成し、一般に公布した。
一部の法院では案例の評価·分析を積極的に行い、編集·出版業務と司法判例をネットワークで公開する業務を行っており、司法案例を公開して社会の監督を受けるとともに、法執行の手本としている。2003年11月から、北京市法院システムでは全ての知的財産権の裁判文書をネットワークで公開している。北京高級法院民事第三法廷は「北京知的財産権審判叢書」1セット4冊を編集して出版し、中国社会科学院知的財産権センターと協力して3度にわたって「知的財産権弁案参考」を出版した。上海高級法院は「知的財産権案例精選(2001-2002)」を出版。安徽高級法院は「知的財産権案例の司法官解析」を出版した。数多くの知的財産権審判担当者が勤勉に勉強し、研究に努めて、目立った成果をあげている。知的財産権の司法官が発表した文章と著作は中国の知的財産権法学文献の重要な源となっている。上海法院の知的財産権審判担当者だけでも1年に専門の論文を130以上も発表しており、北京高級法院民事第三法廷が協力して行った法制宣伝業務では1年に200あまりの文章が発表されている。
知的財産権の司法官は、訪問者の接待、国外出張などの機会を利用して、中国の知的財産権司法保護の成果を宣伝している。最高人民法院民事第三法廷だけで1年間に日本、アメリカなどの代表団の接待業務を6回行っている。知的財産権の司法官の多くが国外訪問の場で英語で講演を行って、中国の知的財産権保護の立場を全面的に紹介し、中国の知的財産権審判業務の成し遂げた成果を客観的に紹介している。一部の外国人の中国の知的財産権法と審判作業についての誤った認識に対して、すみやかに誤解を解消し、中国法院の知的財産権司法保護についての良好な国際的イメージの維持に努めた。
2003年に全国の知的財産権審判業務が成し遂げた成果は大変大きいが、同時に明らかに見られるのは、人民法院の知的財産権の司法保護作業が直面する案件の圧力がますます大きくなってきており、司法上の難問が次々に現れている事実である。特に知識型経済という時代背景の下で、国際的な知的財産権保護の情況には重大な変化がおき、党と国家の政策や経済発展、社会的進歩が知的財産権の審判業務に求める要求はますます高くなっている。中国の知的財産権の審判は、厳しい国際的な挑戦と国内発展のニーズに直面して、今後しばらくの間任務がますます大きくなることが予想される。新しいスタート地点に立ち、チャンスと挑戦、困難と希望が並存する中で、各級法院と全体の知的財産権の司法官はチャンスを捉え、困難に立ち向い、業務に励み、革新を続け、中国の知的財産権審判業務の新しい局面を全面的に開拓するために努力を続けなければならない。 |